キーワード解説「こ」

これまでの日本語教育能力検定試験に出題されたキーワードを、随時解説していきます。知識の補完・整理にご活用ください。

公的自己(こうてきじこ)

人格構造のうち、他人に知らせる自分の部分。

ディーン・バーランドは、公的自己を以下のように説明しています。

「公的自己」は、人格のうちでも他人に容易にわかり、ただちに知ることのできる分野である。この公的自己の内容も各人それぞれ異なるものである。それは自分の仕事、好み、家庭生活、公の問題に対する意見、その他日常の無数の出来事に対する自分の反応などであるかもしれない。世間話はともかくとして、こういう話題はごく普通の会話に一番よく出てくる話の種であり、この種の事柄は自分の方から進んで話したり、他人に聞かれて快く答えたりするものである。 (『日本人の表現構造』p.40)

彼は、人間の人格構造をその中心から「未知なる自己」(著書では「U」と表現しています。)、「私的自己」、「公的自己」と、3重の同心円モデルを提唱し、それによって個人レベルの異文化コミュニケーション摩擦のメカニズムを説明しています。

例えば、比較的私的自己が厚く公的自己が薄い日本人と、逆に比較的私的自己が薄く公的自己が厚いアメリカ人が、アメリカ式コミュニケーション(アメリカ人にとって快適な心的距離のコミュニケーション)をとった場合、以下の図のようになるととらえることができます。

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この時、アメリカ人にとっては、自分の公的自己の中に日本人の自己が十分入り込んでいて(つまり十分な交流ができていると感じていて)、なおかつ自分の私的自己内にまでは入り込まれていない(つまり、プライバシーを侵害されていない)ので、快適なコミュニケーションと感じます。
  一方、日本人にとっては、自分の公的自己を突き破って私的自己内にまでアメリカ人の自己が入り込んでいる、あるいは自分の私的自己までさらけ出すことを強要されている(つまり、プライバシーを侵害されている)ので、不愉快なコミュニケーションと感じるわけです。 

 私も学習者と接していてある程度親しくなると、急に向こうがさらに親しげに(というか、若干馴れ馴れしいと感じることも…)接してくる時があったりします。そんな時、「もしかしたら…」と思えれば、多少なりとも相手を許すことができるでしょうし、また、相応にうまく対処するだけの心のゆとりを持つこともできるのではないかと思います。


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