夜間中学について知識を深める-再注目される学びの場。

「日本語教育ニュースフラッシュ」でも
ご紹介した通り、

今、全国的に夜間中学を増やそうという
動きがあります。

 

しかも、文部科学省が音頭をとっている
と聞くにつけ、時代の変化を感じますね。

 

というのも、かつて文部科学省は、

「国民はみな義務教育を受けている。」
「学齢期を過ぎた者に対する教育の義務を
国は負わない。」

という立場から、

夜間中学の存在を認めていなかったから
です。

 

ただ、今は学齢期に義務教育を受けられな
かった人への受け皿という側面だけでなく、

昼間仕事をしながら日本語に不自由を感じて
いる外国人生活者への教育の場としての役割
も担っています。

 

しかも、今後、日本が生活者としての外国人
労働者やその家族の増加が見込まれることから、

彼らに対する日本語教育の場として
夜間中学がにわかに注目されているのです。

 

そう考えると、私たちも近い将来、夜間中学で
外国人に日本語を教える可能性が大いにある
わけで、

そういう意味で、夜間中学について基本的な
知識、

少なくとも日本語教育との関連に関する
基本的知識はもっておくべきでしょう。

 

通信講座「篠研の検定対策」講義資料

「日本の識字教育」

では、夜間中学と日本語教育との関係について
以下のように解説しています。

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1952年のサンフランシスコ講和条約によって外国人
とされた在日韓国・朝鮮人(=オールドカマー)に
加え、

1965年の日韓条約の締結による韓国からの引揚・帰
国者の受け入れ、

1972年の日中国交回復による中国残留帰国者の受け
入れ、

また1991年入管法改正による日系ブラジル人・ペ
ルー人(=ニューカマー)の大量入国、

さらに2000年代以降の日本社会の国際化により、

夜間中学(校)は彼らが日本語を学ぶ場としての
役割を担うようになりました。

 

この点について、大多和(2017)は以下のように指
摘しています。

(4)夜間中学校は公立中学校でありながらも、引
揚・帰国者や定住外国人など日本語が不自由
な人びとの社会参加のための「日本語教育」
という新たな役割を担うようになったことで
ある。先にも述べたが、夜間中学校は開設当
初対象とした学齢生徒にとどまらず、学齢超
過者にも教育機会を与える機関としての役割
を担ってきた。その中には不登校経験者、引
揚・帰国者、さらに在日韓国・朝鮮人、ニュー
カマーなどもいた。常にその社会状況を反映
するかたちで入学者も変化してきたことが後
づけられている。そして、近年では、ニュー
カマーの増加により定住外国人への教育機会
の保障/提供というきわめて現代的な問題を
孕むようになってきているといえる。(p.19)

こうした状況に対応しようと、東京都は1971年、日
本語を母語としない生徒に対する第二言語としての
日本語教育の場として、

夜間中学校3校に日本語学級を併設させました。

引揚者の多くが夜間中学(校)に在籍した大きな理
由は、

受け入れ当初、彼らに対する日本語教育や自立支援
を行う公的教育機関が不十分だったことがあげられ
ます。

こうした引揚・帰国者を取り巻く問題が社会問題化
する中で、

現場関係者や彼らに対する日本語教育の場としての
夜間中学(校)を提供していた自治体から「引揚者
センター」構想が持ち上がり、

1984年、埼玉県所沢市に「中国帰国孤児定住促進セ
ンター」の設立に結実するに至りました。

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中国帰国孤児定住促進センター設立の裏には、
夜間中学の存在があったんですね。

 

こうした過去の事例を知るにつけ、あらためて

「歴史は繰り返す。」

と認識させられると同時に、

現在の動きがさらに大きな日本語教育の流れに
発展する可能性を予感させます。

 

なお、引用した文献はこちらです。

大多和雅絵(2017)『戦後夜間中学校の歴史-学齢超過者の
教育を受ける権利をめぐって』六花出版
https://amzn.to/2R11RHs

 

日本の夜間中学についてまとまった知識が得られる
数少ない書です。

 

この中で日本語教育とのかかわりについても述べ
られています。

 

私も読みましたが、非常に知識が深まりました。

 

今後に対する準備のためにも、一読をお勧めします。


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