管理職に外国人児童の日本語指導の必要性を理解してもらうには(2)

前回からの続き。

 

先日登壇したおおいた国際交流プラザ主催

「日本語ボランティア スキルアップ講座
「日本語教室(経験者)編」
外国人に日本語を教える方法
-明日から使えるプロの技-」

で頂いたご質問。

 

「管理職の方に外国人児童に対する日本語指導の
必要性をどのように分かってもらえるかが知りたい」

 

ここで、私は講演で以下の3つをご紹介させていただ
きました。

 

・臨界期仮説
・閾(しきい)説
・制限コードと精密コード

 

今回は2つ目の「閾(しきい)説」について
説明しますね。

 

これは、バイリンガルの2言語能力の到達度と
知的発達には相関関係があり、

それは、2段階の見えない壁(=閾(しきい))
があるという説なのです。

 

閾(しきい)説について、通信講座「篠研の検定
試験対策」の講義資料

「No.082 二言語併用主義(バイリンガリズム)」

では、以下のように解説しています。

======================

カミンズは、2言語の到達度と知的発達の関係
にも触れ、

両語が十分なレベルに達しているバランス・バ
イリンガルでは知的発達にも好影響を与え、

片方のみ発達したドミナント・バイリンガルで
は知的発達に影響はなく、

両語とも十分なレベルに達しないダブル・リミ
テッド・バイリンガルではかえって知的発達に
悪影響を及ぼすとしました。(p.7)

=======================

つまり、両語とも不十分な外国人児童は
単に言語能力だけではなく、

知的能力も年齢相応のレベルに達しない
というのです。

 

そして、それはどちらかの言語が十分発達
しないと、いくら算数や理科の勉強をしても、

見えない壁のようなものが立ちはだかって
どうあがいても上のレベルに行けないという
のです。

 

これを、前回の臨界期仮説と重ね合わせて
考えれば、

母語習得期にしっかり母語を習得しないと、
知的発達も年相応のレベルに達せず、

後になっていくら取り返そうと頑張っても
もう手遅れになってしまうということを意
味します。

 

一生、「知的未発達」という足かせをして
生きていかなければならないのです。

 

もちろん、自分がそんな状況に置かれている
ことなど、児童は知る由もありません。

 

しかし、それは確実にそうなのです。

 

しかしながら、一方で周りの大人はというと

親は親で「学校に任せれば何とかなる」と、
自分の子どもの言語教育に無頓着だったり、

学校は学校で「予算がない」「外国人は指導
の対象外」と言って取り合わなかったり。

 

あまりにもひどすぎると思いませんか。

 

学校に任せれば何とかなるわけではありません。

予算がないのではなく、予算をつけようという
気がないのです。

 

外国人家庭を受け入れるのであれば、十分な
レベルの受け皿をすぐに用意しなければなり
ません。

 

なぜなら、子どもはあっという間に大きく
なってしまうからです。

 

もし、その余裕がないのであれば、そもそも
外国人の受け入れなど考えるべきではないで
しょう。

 

外国人も日本人も不幸になるだけです。

 

「(管理職)さん、子どもを安全に任せられ
ない地域に、ご自身の子どもを委ねること
ができますか。

自分の子どもが、知的未発達のまま大人になる
ことを想像できますか。」

ということなんですね。

 

改めて言いますが、

外国人、日本人関係なく児童生徒の言語教育というのは
私たちが想像するよりはるかに重要なことなんですね。

 

続きは、次回に。


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