湯呑持たずに手にお茶をかけたら、そりゃ火傷しますよという話。

今日は、午前中地元の自治体の方と来年度の
日本語教育支援事業についてお話しさせて
いただきました。

 

この市では、地元中小企業が多くの技能実習生を
受け入れており、

今後はさらに増えることから、自治体としても
日本語教育支援をしていきたいということ
でした。

 

ところが、市の担当者の方のお話によると、
地元企業はどこも人手不足に悩んでいながら、

技能実習生の受入れに消極的なところが少な
くないとのこと。

 

というのも、今まで受け入れてきたものの、
逃げられたり、トラブルを起こしたりで
大変な思いをした経験があるからだとか。

 

そこで、私はこうお話しさせていただきました。

「実習生に対する日本語教育を考える前に、

受け皿である日本人社員側に対する教育は
なさいましたか。

例えば、ベトナム人が職を離れる理由の
1つに、

『日本人の同僚に発音の悪さを馬鹿にされる。』

というのがあります。

ベトナム人の日本語の発音は全体的に鼻音
がかっていて、幼児っぽい話し方に聞こえます。

それを、同僚の日本人社員に馬鹿にされて
ショックで辞めるわけです。

 

また、企業側から

『日本語の勉強をしたって聞いたが、ベトナム
人に「メシ、食いに行くぞ!」と言っても通じ
ないじゃないか。
こんな簡単な日本語も分らないのか。』

と言われることがありますが、

まだ日本語力の低い実習生にとって、
「メシ」「食う」は未習語彙で分かりません。

そういう場合は、

『昼ご飯をいっしょに食べに行きませんか。』

と言わなければ分からないのです。

実習生の分かる日本語で話さなければ
通じないのです。

そうしたことが積もり積もれば、行き違いが
起こり、ほどなくトラブルに発展するのです。」

 

技能実習生の問題というと、とかく彼らに対する
日本語教育がクローズアップされますが、

実は、受入側である日本人社員への受入れ教育
のほうこそが、成否のカギだったりします。

 

実際、こうしたミスコミュニケーションが日常的に
起これば、

職場の雰囲気や効率性が悪化するばかりか、
ひいては、業務上の安全管理にも支障をきたし、

実習生が就業中に大けがしたり、最悪死亡したり
した場合(当然労災認定の対象です。ちなみに、
不法就労者でも労働関連法の対象となります。)、

医療費や慰謝料の支払いはもちろんのこと、

当該企業の社会的信用の低下、

さらには、先数年間にわたって実習生の受入れが
できないなど、

多大な損失を被ることになります。

 

だいたいにおいて、さしたる見通しもなく
とりあえず実習生を受け入れるだけ受け入れて、

あとは対処療法で何とかしようという企業や
自治体が、こういうパターンに陥り失敗します。

 

そうならないためにも、最初の段階で日本人、
外国人双方にしっかりコストをかけてでも
教育する必要があるのです。

 

これは、たとえて言えば

湯呑を持たないで手にお茶をかけるようなもの。

 

湯呑の準備(=受け皿側の教育)もしないで
いきなり手にお茶をかければ、そりゃ火傷しますよ、

という話。

 

そして、過去に火傷した経験があるから
お茶を飲むのに躊躇しているとすれば、

問題の本質はそこではなく、

そもそも湯呑を買う金をケチったあなたに
原因があるのでは、ということなんですね。

 

そこが分からなければ、一生お茶が飲めない
ということになるわけです。

 

逆に、最初にちゃんとした湯呑を用意して
そこにお茶を注げば、

火傷することなく、美味しいお茶を一生涯
楽しむことができるわけですね。

 

多くの自治体(特に地方)では、人手不足を背景に
外国人労働者なしでは地場産業が成り立たない
という状況に直面しています。

 

外国人労働者の受入れは、単に一時的な不足人材
の補てんに止まらず、

その地域の未来像に直結した重大な問題なわけです。

 

それだけに、初期の教育投資にどれだけ意義や価値
を見出し、相応の資金を投入できるかが、

10年後、20年後の地方自治の成否に反映するだろうと
思います。


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