「日本語教育能力の判定に関する報告(案)」を読む(5)

先日、文化庁から発表された

「日本語教育能力の判定に関する報告(案)」
https://bit.ly/33JfmP9

を読む。

第5回の今日は、その本丸である

「日本語教育能力の判定に関する報告(案)」
(令和元年11月8日国語分科会)
https://bit.ly/2qTVBFZ

の4回目です。

今回は、

「4.資格取得要件2:教育実習」

について読んでいきます。

今回の制度では実習をかなり重視しています。

確かに、これまでも例えば、

「検定試験に合格しただけで実習経験がなければ
なかなか現場で使える人材にはならない。」

などといった批判が起こることもありました。

また、実習をするといっても大学はもちろん
日本語学校等が実施する420時間コースの実習
の場合、学習者のほとんどが留学生。

今後、日本は多様な外国人を受け入れることに
なるので、

そうしたニーズに対応できるためにも実践力の
ある日本語教師の育成が急務なわけですね。

では、早速。

「(1)(1)教育実習実施機関及び指導時間」

ここでは、以下の7項目が掲げられています。

○日本語教師に求められる資質・能力のうち,日本語教師
に必要な技能・態度に含まれる実践力を身に付けるため,
教育実習の履修を必須要件とする。(再掲)

○教育実習実施機関は,大学及び文化庁届出受理日本語教
師養成研修実施機関とし,これらの機関は,教育実習の
一部を外部の日本語教育機関等と連携して実施すること
を可能とする。

○大学の日本語教師養成課程(主専攻45単位,副専攻
26単位以上)において,教育実習(1単位以上)を必
ず履修し修了することとする。

○文化庁届出受理日本語教師研修実施機関(420単位時
間以上)において,教育実習(45単位時間以上)を必
ず履修し,成績評価を受け,修了を認定されることを要
件とする。

○教育実習の時間数は,最低基準を示すこととする。1単
位時間は45分以上とする。

○教壇実習については,大学及び文化庁届出受理日本語教
師養成研修実施機関が用意した機関・団体で実施するこ
ととし,海外も認めることとする。

○教育実習実施機関は,留学生に加え,「生活者としての
外国人」や就労者,児童生徒等,海外など,日本語教師
の活動分野となる多様な教育実習現場を設定するよう努
めることとする。

まとめると、

(1) 実習の必須化

(2) 実習機関は大学か文化庁届出受理機関

(3) 大学の養成課程(主・副)では必ず実習を履修(1単位
以上)。
(4) 文化庁受理機関も同様(45単位以上)。
(5) 実習は留学生だけでなく、多様な実習現場を設定する
(努力目標)

(3)と(4)では、一見大学の方が圧倒的に実習時
間が少ないんじゃないかと思われるかもしれま
せん。

ここでの「単位」は、おそらく「45分」という
意味ではなく、大学の授業における「単位」と
いうことでしょう。

大学の授業では1単位取るのに1回90分の授業を
15回受けなければなりません。

実習のような演習授業の場合、授業1回あたり
90分の予復習をするという建前なので、

90分を45分2単位に換算すると、1回の授業で
4単位。

これに15回をかけると計60単位という計算に
なります(間違ってないですかね)。

そして、(5)がこれまでの実習にはない特色と
言えます。

実習実施機関にとっては、なかなかハードルが
高いので努力目標となっていますが、

この辺りで、実習実施機関の特色が大きく分か
れるのではないかと思います。

私が住む別府のような地方では、恒常的に外国
人児童生徒に対する実習の機会を設けるのは、
かなり難しいと思います。

さて、次の、

「(2)内容」

では、以下の4項目について述べられています。

○日本語教師に求められる資質・能力のうち,日本語教師
に必要な技能・態度に含まれる実践力を身に付けるため,
教育実習の履修を必須要件とする。

〇日本語教師の教育実習の内容は,平成31年3月「日本
語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」に
示された日本語教師の養成修了段階で身に付けておくべ
き基礎的な資質・能力を育成するために必ず実施すべき
内容である「必須の教育内容」の「(28)教育実習」に定
められた指導項目に基づくものとする。

○教育実習の指導項目は,1~6の内容を全て含むことと
する。

1.オリエンテーション
2.授業見学
3.授業準備
4.模擬授業

※授業計画や教材,指導方法などの妥当性を検討すること
を主な目的として,受講生同士が教員役と学習者役に分
かれるなどして,授業のシミュレーションを行う活動を
指す。

5.教壇実習

※現実の日本語学習者に対して,その学習・教育の効果を
狙って,実際に指導を行う活動を指す。

6.教育実習全体の振り返り

○教育実習実施機関によって教育実習の内容や質に大きな差
が生じないように配慮すべきである。

一見細かく定められているようですが、通常の実習
ではどれも普通に行うことです。

逆に、ここに上げられている項目を実施していない
実習機関は、ちょっと注意したほうがいいでしょう。

あるいは、実習期間を選ぶ際には、上記の1~6に
ついて具体的にどのように実施しているか、事前に
確認するといいと思います。

続いて、「(3)の指導方法」は、要は対面指導を
原則として、オンライン等の遠隔指導は採用しない
こととしています。

最後に、

(4)教壇実習の指導時間及び対象

では、以下の4項目をあげています。

○教壇実習においては,出入国在留管理庁が定めた「日本語
教育機関の告示基準」における日本語教育機関の指導時間
の下限である1単位時間(45分)以上の指導を標準とす
ることが必要である。

○教壇実習の対象となる学習者については,日本語を母語と
しない者を要件とする。

○教育機関が定めたシラバス・カリキュラムにのっとって行
われるクラス型式の授業を経験することを要件とし,5名
以上に対する指導を標準とすることが必要である。

○大学及び文化庁届出受理日本語教師養成研修実施機関にお
いては,その他の授業形態(グループ,マンツーマン等)
や,留学生や「生活者としての外国人」,就労者,児童生
徒等の活動分野別の教育実習現場を選択的に経験できるよ
うにすることや,レベル別・科目別の指導経験を得られる
よう努めることが望ましい。

 

2番目はつまり、日本人相手にやってもダメですよ、
ということであり、

3番目は、基本的にグループレッスンを基本として、
1対1のプライベートレッスンや5人未満の超少人
数クラスじゃダメですよということ。

そして、最後は、多様な実習プログラムを用意する
よう頑張ってね、ということなんですね。

いずれにしても、今後大学にしろ、文化庁受理講座
にしろ、

十分な実習の機会を提供できるようなプログラムの
開発が活発化するところと、

もうはなから養成をあきらめるところと、

明暗が分かれていくのではないかと思います。

ですので、これから日本語教師を目指す方は、身近
に実習を提供してくれそうな教育機関を探しておく
といいかと思います。


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