『日本語教育の推進に関する基本的方針』を読む(その5)

『日本語教育の推進に関する基本的方針』を読む

の第5回目です。

報告書はこちら。

日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進
するための基本的な方針の閣議決定について:文化庁
https://bit.ly/3hTmIai

今回は、

「第2章 日本語教育の推進の内容に関する事項」

の2回目。

「1 日本語教育の機会の拡充
(1)国内における日本語教育の機会の拡充
イ 外国人留学生等に対する日本語教育」

についてみていきます。

2018年に国内の留学生数が30万人を超え、留学生30万人計画
が達成され、

その瞬間、今度は「質への転換」ということで留学生の在留
許可の厳格化へと方針転換をしました。

それにより、多くの日本語学校の新入生の在留許可率が一気
に下がり(学校によっては0%というとこともあったとか。)

さらに、今回のコロナショックで壊滅的な打撃を受けた日本語
学校は相当多いのではないかと思われます。

とはいえ、今後の日本の労働力を確保するうえで留学生は
決して無視できないわけで、

その点でどういう具体的施策を謳っているのか、こちらも
大変興味のあるところです。

では早速。

以下、引用。

============================

イ 外国人留学生等に対する日本語教育

在留資格「留学」により,我が国に在住する外国人留学生(以
下「留学生」という。)は約 34.6 万人(令和元年末)となっ
ており,増加傾向にある。

留学生は,留学を通して高度な知識・技能を身に付けた専門性
を有する人材であり,日本の社会や文化への理解も深まってい
ることから,

留学を終えた後の日本国内への定着・活躍が期待される。

留学生のうち,日本国内での就職や研究を希望する者がその希
望を叶えて活躍することができるよう,

職場等において円滑に意思疎通を図り,日常生活を送るために
必要な日本語能力のほか,

業務に必要な日本語能力の習得等,留学生に対する支援の充実
のために必要な施策を講ずる。

【具体的施策例】

・大学が企業等と連携し,留学生が我が国での就職に必要な
スキルである「ビジネス日本語」等を在学中から身に付ける教
育プログラムを文部科学省が認定し,

留学生の国内企業等への就職につなげる仕組みを全国展開する。

・専修学校が日本語教育機関及び産業界等との連携によって留
学生への日本語教育や卒業後の国内定着の支援等を行う,留学
生受入れモデルの構築を推進・支援する。

・企業から採用内定を得た外国人留学生等に対して,職場にお
いて円滑に定着するために必要なコミュニケーション能力の向
上や日本の雇用慣行,

労働関係法令,企業文化等コミュニケーションを行う上で前提
となる知識の習得を目的とした研修を実施する。

・留学生を含む外国人等の日本語教育環境を強化するため,都
道府県及び指定都市が行う地域日本語教育の総合的な体制づく
りを推進する。

また,留学生を含む外国人等に対する地域における日本語の学
習機会を確保するための取組及びICTを活用した遠隔教育等
の先進的取組を支援する。

=============================

私が最初に注目したのは、こちらの箇所です。

> ・大学が企業等と連携し,留学生が我が国での就職に必要な
> スキルである「ビジネス日本語」等を在学中から身に付ける教
> 育プログラムを文部科学省が認定し,
>
> 留学生の国内企業等への就職につなげる仕組みを全国展開する。

この一節を見た大学関係者の中には、

「これでは、大学は単なる就職予備校ではないか。」

と思われた方も少なくないかもしれませんね。

ただ、これは留学生に限ったことではなく、日本人学生に
おいても、就職に強い大学かどうかは大学選びの際には、
非常に重要な要素であり、

入学後も就職支援をしっかりしているか、また、就職実績
が高いかは、大学のブランドに大きく影響することを考え
れば、

大学の就職予備校化はこれからも大きな流れとなることは
ほぼ間違いないでしょう。

ただ、そうは言っても、じゃあ、企業はいつなんどきでも
就職希望の学生を受け入れてくれるのかは、まったく保証
なしで、

今回のコロナ禍や不景気な状況になれば、一気に採用を控え
るわけで、あてになるものではありません。

実際、このコロナ禍で内定を取り消されて路頭に迷っている
就活生は、日本人・留学生に限らず相当数いると思われます。

だから、大学側としては就職云々に振り回されない、より普
遍性の高い、知的に豊かな人材育成を標榜しているわけです
が、

とはいえ、現実問題として就職せずにどう食べていくのかと
いう問いに明確な答えを示せないまま鬱々としているわけで
す(あぁ、情けない)。

思うに、

そうした状況を打破する方法の1つは、大学教員自ら、自
身の専門で事業を起こし、教え子の1人も採用しながら、

「自分の専門でも、本気出せば十分ご飯が食べられるよ。
というか、そこら辺の一部上場企業に就職するよりよほど
物心両面で豊かな生活ができる。

大学で学ぶことって、それぐらい社会に出てから最強なん
だよ。」

というところを見せることだと思います。

そうして、

「大学でしっかり勉強した学生は、自分の専門で起業して
経営者の道を進み、物心両面で自由な人生を獲得し、

そこそこしか勉強しなかった学生は、企業に就職して
労働者の道を歩み、安定という虚構の中で生きる。」

という価値観をベースに、企業に従属しないライフスタイル
を自ら体現することではないかと思います。

そして、それは大学教員自体が起業し、自らビジネスセンス
を磨いていかなければできるものではありません。

私が起業した理由の1つがこれです。

話を元に戻して、

この文面を真正面から考えると、今後文科省は
「ビジネス日本語」のカリキュラムの基準を作成し、

国立大学やマンモス私大相手に補助金や大学認証評価など
をちらつかせながら、

表面上は応募による審査という形をとりながら(内実は
特に国立大学はほぼ強制。)、

「●●拠点大学」と銘打って留学生の就職支援体制の強化
に乗り出す可能性があります。

私としては、教育機関ばかりではなく、外国人材の受け皿
である企業側にも、

経産省や厚労省と連携して、受け入れ態勢の強化や対日本
人社員に対する異文化理解教育の実施、雇用体制のグロー
バルスタンダード化など、

外国人材の受け入れに見合った取り組みをある程度義務化
してほしいと思いますが、

選挙のことを考えれば、なかなか難しいのかもしれません。

皆さんは、どのように感じられましたでしょうか。


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