『日本語教育の推進に関する基本的方針』を読む(その7)

『日本語教育の推進に関する基本的方針』を読む

の第7回目です。

報告書はこちら。

日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進
するための基本的な方針の閣議決定について:文化庁
https://bit.ly/3hTmIai

今回は、

「第2章 日本語教育の推進の内容に関する事項」

の5回目。

「1 日本語教育の機会の拡充
(1)国内における日本語教育の機会の拡充
オ 地域における日本語教育」

についてみていきます。

2018年、2019年にいわゆる『総合的対策』が政府より
打ち出され、

在住外国人に対する日本語教育をはじめとした行政サー
ビスの充実が謳われてから、

全国の自治体では支援体制づくりにざわめき立った
わけですが、

実際は、進んでいる自治体もあれば、ほとんど手つか
ずのところもあり、地域によってかなりの温度差があ
るようです。

そのような状況の中で、政府はどのような基本的方針を
示しているのでしょうか。

では早速。

以下、引用。

============================

オ 地域における日本語教育

地域における日本語教育は,身分又は地位に基づいて在留する
外国人等(永住者,日本人の配偶者等,永住者の配偶者等,定
住者,家族滞在。令和元年末現在,約 139 万人)をはじめ,

我が国に在留する全ての外国人を対象とするものである。

地域に在住する外国人が自立した言語使用者として生活してい
く上で必要となる日本語能力を身に付け,日本語で意思疎通を
図り,生活できるよう支援する必要があるが,

在留資格や背景の多様化が進み,日本語の学習を希望する外国
人等が必要とする日本語教育は一様ではない。

外国人等の日本語学習の意欲にも差があると言われている。

また,外国人等の集住地域と散在地域があることや,日本語教
育を行う機関や日本語教育人材の地域による偏りなど,日本語
教育の状況は地域による差が大きくなっている。

さらに,日本語教師,地域日本語教育コーディネーター,行政
・地域国際化協会・NPO等の職員,ボランティア等の多様な
者が,

学習支援,教室運営等の様々な役割に応じて地域における日本
語教育を担っていることから,

都道府県及び市町村,企業,学校等の関係機関の連携・協力の
推進を図る必要がある。

そのため,各地域において,地域の実情に応じた日本語教育を
実施するとともに,

日本語を学習する機会を提供すること,一定水準の学習内容を
示すこと,

日本語を教える人材の質の担保・量の確保を図ること,学習目
標の明確化等を通じて外国人等の日本語学習への動機付けを図
ることが肝要である。

これらを踏まえ,外国人等が自立した言語使用者として日本社
会で生活していく上で必要となる日本語能力を身に付け,

教育・就労・生活の場でより円滑に意思疎通できるようになる
ことを目指し,地域における日本語教育環境の強化のために必
要な施策を講ずる。

【具体的施策例】

・都道府県及び指定都市が行う,総合調整会議や総括コーディ
ネーターの設置,日本語教室の実施,行政職員や地域住民に
対するやさしい日本語の研修等の地域日本語教育の総合的な
体制づくりを支援するとともに,

ノウハウの提供,地方公共団体の日本語教育担当者との情報
交換による日本語教育の状況把握及び地方公共団体間の情報
交換の機会の提供等に取り組み,

全国において地域日本語教育を推進する。

・日本語教室が開催されていない地域に居住している外国人等
に日本語を学習する機会を提供するため,

一定数の外国人等が在住しているが,日本語教室が開催され
ていない市区町村(以下「日本語教室空白地域」という。)
に対して

日本語教育の専門家をアドバイザーとして派遣し,日本語教
室の開設を促進する。

また,日本語教室空白地域を対象に日本語教室開催に係る先
進事例等を紹介する協議会を開催し,日本語教室の開設・運
営についての協議の場を提供する。

さらに,日本語教室空白地域等に在住し,日本語教室に定期
的に通うことが困難な外国人等のために,

生活場面に応じて日本語を自習できる日本語学習教材(IC
T教材)の開発を進め,提供を行う。

・NPOや公益法人,大学等が取り組む,地域の実情や外国人
等の状況に応じた日本語教育や日本語教育人材の育成のため
の先進的な取組を支援する。

・行政や地域の関係機関(地方出入国在留管理局,経済団体,
大学,日本語学校,NPO等)との連携や日本語教室の企画
・運営の中核を担い,

日本語教育プログラムの編成及び実践に携わる地域日本語教
育コーディネーターを育成するための研修を実施する。

・地域日本語教育の優良事例等の情報共有や国の政策動向等の
周知を図るため,地方公共団体の日本語教育担当者に対する
研修を実施する。

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実は、今回読んだところまでが国内での対応策で、
次回から海外での対応策に話が移るのですが、

ここまで読んで来た私の率直な印象は、

「今までの取り組みと比べて、どこが目新しいの?」

といった感じです。

先ほど少しふれた「総合的対策」、正式には、

「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」
https://bit.ly/3eTe89I

ですが、上記サイトをくまなく見ていただくとよく
わかりますが、

こちらの方がより対策が多岐にわたり、しかも具体
的ですし、

各項目ごとの担当省庁も明記されていますし、各項目ごと
の予算額も明記され、

しかも、令和元年度の進捗状況、令和2年度の当初予算
までしっかり記述されています。

それに比べると、今回の「基本的な方針」は予算枠が
明記されていおらず、

何をどこまで、どれくらいの規模感でやるのかがはっき
り見えてこないなぁというのが私の印象です。

もしかしたら、日本語教育基本法が制定されたことで、

「あらためてこの法律をスタートラインにして、
また1から積み上げていきましょう。」

ということなのかもしれません。

あらためて結論を言いますと、

「これまでの関連文書を踏襲しただけで、
特に目新しいものはない。」

といった感じです。

皆さんは、どのように感じられましたでしょうか。


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