『日本語教育の推進に関する基本的方針』を読む(その10)

『日本語教育の推進に関する基本的方針』を読む

の第10回目です。

報告書はこちら。

日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進
するための基本的な方針の閣議決定について:文化庁
https://bit.ly/3hTmIai

今回は、

「第2章 日本語教育の推進の内容に関する事項」

の8回目。

「2 国民の理解と関心の増進
3 日本語教育の水準の維持向上等
(1)日本語教育を行う機関における日本語教育の水準の維持
向上
(2)日本語教育に従事する者の能力及び資質の向上等

についてみていきます。

特に、強い関心があるのは3(2)ですよね(^_^)

どんなことが書かれているのでしょうか。

では早速。

以下、引用。

============================

3 日本語教育の水準の維持向上等

(1)日本語教育を行う機関における日本語教育の水準の維持
向上

法務大臣が日本語教育機関の告示基準に適合しているとして
留学告示で指定した日本語教育機関は,

近年様々な課題が指摘されていることから,令和元年8月に告
示基準の一部が改定され,基準の厳格化が図られた。

今後,同告示基準の適正な運用により,適切に日本語教育環境
を確保していく必要がある。

また,将来,日本語教育に従事しようとする者に対して質が高
く安定した教育・研修を提供することが重要である。

そのため,日本語の学習希望者に対して充実した学習機会を提
供する観点から国内外において,日本語教育を行う機関の日本
語教育水準を維持又は向上させるための措置を講ずる。

【具体的施策例】

・日本語教育機関が,在籍する留学生の日本語能力に係る試験
結果等を出入国在留管理庁に報告し,

一定の基準を下回る場合には改善方策を報告することとされ
ている制度の運用において,

日本語教育機関から提出された資料等に基づく指導や積極的
な実地調査等を適切に実施することにより,日本語教育機関
の教育水準の維持向上を図る。

・出入国在留管理庁が定めた日本語教育機関の告示基準におけ
る教員の要件の一つである日本語教師養成研修について,

文化庁への届出を義務化し,質の高い日本語教育人材の養成
を図る。

・JFを通じ,日本語教育の専門家等を海外に派遣するととも
に,現地の教育行政機関と協力して教育カリキュラム及び教
材の開発普及,日本語教師養成コースの設置等を進める。

また,海外の日本語教育を行う機関の教育水準を維持向上さ
せるために必要な教師の雇用や教材調達,

日本語教育関連の催しの開催等に必要な経費の一部を助成す
るほか,機関間のネットワークを強化し,教授法や教材等の
情報共有及び相互協力を促す。

(2)日本語教育に従事する者の能力及び資質の向上等

国内における多様な背景を持つ外国人等の受入れの進展や海外
における日本の社会や文化への関心の高まり等を背景として,

国内外での日本語学習ニーズの増大によって日本語教育がより
一層必要とされているため,

日本語教育に従事する者(以下「日本語教育人材」という。)
の養成及び資質・能力を向上させるための研修の実施のために
必要な措置を講ずる。

【具体的施策例】

・文化審議会国語分科会において取りまとめた「日本語教育人
材の養成・研修の在り方について」(報告)に示された教育
内容等に基づき,

生活者としての外国人,留学生,児童生徒等,就労者,日本
語学習支援者等に対する日本語教育人材の養成・研修を推進
するため,

具体的なカリキュラムの開発及び実施,並びにその普及を図
る。

・日本語教師の質を担保するため,文化審議会国語分科会にお
いて取りまとめた「日本語教師の資格の在り方について」
(報告)を踏まえ,

日本語教師の資質・能力を証明する新たな資格の制度設計を
行い,必要な措置を講ずる。

・行政や地域の関係機関(地方出入国在留管理局,経済団体,
大学,日本語学校,NPO等)との連携や日本語教育プログ
ラムの編成

及び実践に携わる地域日本語教育コーディネーターを育成す
るための研修を実施する。【再掲】

・地域日本語教育の優良事例等の情報共有や国の政策動向等の
周知を図るため,

地方公共団体の日本語教育担当者に対する研修を実施する。
【再掲】

・JF等を通じ,現地の日本語教師に対する研修会の支援,現
地日本語教師の訪日研修等を実施するとともに,

日本語教育の専門家等による日本語教育を行う機関に対する
巡回指導等を行うことで,外国人等である日本語教師の能力
及び素質の向上を支援する。

・JICAを通じ,帰国したJICA海外協力隊が日本国内の
各地域における日本語教育人材として活躍するための支援を
行う。

=============================

まず、

(1)日本語教育を行う機関における日本語教育の水準の維持
向上

の中にある

> 近年様々な課題が指摘されていることから,令和元年8月に告
> 示基準の一部が改定され,基準の厳格化が図られた。

この部分は、具体的には日本語学校の設置認可を行っている
法務省出入国在留管理庁が出した下記文書を指します。

日本語教育機関の告示基準
https://www.mext.go.jp/content/1422263_011.pdf

細かい話はともかくとして、これにより法務省告示校になる
ための審査がより厳しくなったと理解すれば、ひとまずOKです。

留学生30万人計画が2018年に達成されたことで、それまで
とにかく数重視だったのが、

一転して質重視に転換した1つの表れなわけです。

 

次に、

(2)日本語教育に従事する者の能力及び資質の向上等

の中にある

> 文化審議会国語分科会において取りまとめた「日本語教育人
> 材の養成・研修の在り方について」(報告)

これは、2018年に文化庁が出した下記文書を指します。

「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」
について
https://bit.ly/2NXRaSG

これは、日本語教育人材をその役割に応じて,

1.日本語教師
2.日本語教育コーディネーター
3.日本語学習支援者

の三つに分類し,その分類と段階や活動分野ごとに,求められる
資質・能力,養成・研修の在り方及び教育内容を示したもの。

例えば「1.日本語教師」であれば、キャリアに応じて「養成」
「初任」「中堅」の3つに分類し、

それぞれの段階で求められる知識やスキルを得るための研修
内容を示しています。

今まで、特に現職者向けの組織的かつ統一的な研修活動という
ものはありませんでした。

せいぜい日本語教育振興協会(日振教)が実施している教師
研修ぐらい。

ですが、それでは日本語教師の質を担保することができないよね、
だから、統一的な研修プログラムを作って、実施しましょうよ、
という話なのです。

ですが、私はこの制度には大きな問題があると感じています。

というのも、この研修制度、日本語教育に関するその他の制度、
例えば日本語学校設置基準とか、公認日本語教師制度とかと
まったくつながっておらず、いわば宙ぶらりんな制度。

従って、この研修を受けたからといって日本語教師の待遇の向
上につながる仕組みがまったくできていないのです。

もっと言えば、この研修の受講費用をだれが負担するかさえ
実は何も決まっていません。

つまり、教師にとって受講するメリットが見えない。

最悪、この研修を受けた日本語教師は就活の際に不利になる
のではないかとさえ思います。

もし、私が日本語学校の経営者であれば、この研修受講者は
できれば採用しないです。

主な理由は、2つ。

1.人件費が膨らむ。
2.余計な説明責任が出て面倒。

1については、「初任」「中堅」のようなオプションがあれ
ば、それなりに給料に差をつけるのが一般的な考えでしょう。

そうすれば、単純に人件費がかかります。

研修といっても最大公約数的なざっくりとした内容にならざ
るを得ないはずですから、

研修の内容が自校にどこまで合うかは未知数。

それなら、自校の事情を熟知した実力派の主任教員のマネー
ジメントのもとで「養成」レベルの日本語教員を雇い
(「養成」レベルだから人件費も抑えられる)、

OJTを通じて2~3年かけて自校仕様に教育していった方が
よほどいいです。

2については、前述の通り、研修内容が自校にあっているか
どうかはわかりません。

ですが、私が学校の都合で研修内容と異なることを教師に
求めると、おそらく多くの教師は、なぜそうなのかと説明
を求めるでしょう。

そうすると、いちいち説明しなければならなくなります。

もちろん説明が必要な時は説明すべきですが、いちいち説明
していたら、業務が効率的に前に進みません。

ですが、頭の中が真っ白な教師であれば、

私が「ああしろ。」といえば「はい、はい。」と言ってやり、
「こうしろ。」といえば「はい、はい。」と言ってやる。

最初は意味も理由もわからなくても、実際にやってみると、
「なるほど、そういうことだったのか。」と理解する。

一見場当たり的に聞こえるかもしれませんが、事業のやり方
としてはかなり効率的です。

もし、やはり研修が必要だという話になれば、主任教員を
講師にして長期休暇中にすればいい。

だから、私はこの研修制度も利用はしないです。

自前でやったほうが、内容も自由にできるし、スケジュール
調整も簡単。

自校の教室で社員を講師にしますから、余計な出費はありま
せん。

ですが、外部委託だとこうはいきません。

というようなことをいろいろ考えると、教師の質の向上を
謳うのであれば、

その仕組みを実際に運用すると、どのように人が流れるか
ということをしっかりシミュレーションする必要があるし、

と同時に、

教師の待遇の向上もセットにして制度設計を考えないと

結局「なり手がいない」ということになるのではないかと
若干危惧しています。

皆さんは、どのように考えますでしょうか。


日本語教師をめざす方、現職日本語教師の方のための無料メルマガ
無料メルマガ「篠研の“日々成長する教師”」

授業の小ネタや授業実践のコツ、教師としての考え方、息の長い日本語教師になるための知恵などを週2日(火・木)でお届けします。

さらに、今ご登録なさると特典が無料でダウンロードできます。
特典 「精読指導の秘奥義」(全24ページ)

解除はもちろんのこと、メールアドレス変更など個人データの編集も簡単ですので、ご安心ください。プライバシーポリシーをご確認の上、ご登録を希望されるメールアドレスを入力し、ご希望の項目ボタンを押してください。

  メールアドレス【必須】
  お名前(姓)【必須】
  お名前(名)【必須】
  よみがな【必須】
  都道府県【必須】 なお、海外在住の方は「海外」をお選びいただき、下記項目に例のようにご記入ください。
  海外にお住まいの方は「ベトナム(ホーチミン)」のようにお書きください。