なぜ学習者のニーズやウォンツが分からないのか。

前回、前々回、

「化石化教師にならないために」

というお話をさせていただきました
ところ、

早速、S.K様よりご質問を頂戴
いたしました。

S.K様、ご質問ありがとうございます。

できれば、次回からご質問は、

ポッドキャスト
篠研の「教えて!篠崎先生っ!」ご質問受付
https://www.kanjifumi.jp/podcast_shitumon/

にお寄せいただけると喜びます!

以下、ご質問。

====================

篠崎 様

いつもありがとうございます。

今日の学習者のウォンツの話、
ためになりました。

では、学習者のウォンツを知る為には
どうしたらよいでしょうか。

よろしくお願い致します。

追伸

今、ベトナムのハノイで中高校生に
第2外国語として日本語を教えている
者です。

場所は普通の学校の中の教室です。

====================

なるほど。いいご質問ですね。

このご質問にお答えする前に、
まず、ニーズとウォンツの違いに
ついてはっきりさせておきましょう。

ニーズとウォンツは、経済学とくに
マーケティングの分野でよく扱われる
用語です。

ニーズとは、例えば、

「日本人と対等に話せるように
なりたい。」

とか、

「日本語能力試験に合格したい。」

のように、

「最終的にどうなりたいのか。」

に関わる顧客の欲求のことを言います。

一方、ウォンツとは、例えば、

「(日本人と対等に話せるように
なりたいから))
日本語教室に通いたい。」

とか、

「(日本語能力試験に合格したい
から)
通信講座に入会したい。」

のように、ニーズを満たす手段として

「このモノやサービスが欲しい。」

に関わる顧客の欲求のことを言います。

そう考えると、

「ニーズは目的、
ウォンツは手段。」

と捉えると分かりやすいかと思います。

ここから改めて日本語教育で言う
ニーズ調査をとらえ直してみましょう。

ニーズ調査とは、

「会話を勉強したい。」とか、
「漢字を勉強したい。」のように、

「何を勉強したいのか」
についての調査ですが、

先の定義から考えると、実は、
ニーズとウォンツが混在して
いて、

どうかすると、

「これ、ウォンツ調査と言った方が
いいんじゃないの?」

と思われる質問項目も少なくないん
ですね。

また、ニーズ調査を実施しても、
学習者のニーズやウォンツが
はっきりとつかめない、

ということも少なくありません。

あるいは、

「ニーズ調査に沿ってレッスンを
したのに、

『私が教えてほしいのは、
そういうことじゃない。』

と言われて困った。」

というようなことも起こったりします。

特に、面接調査ではなく質問紙調査で
やると、そうなるリスクが高いです。

だからこそ、今回のようなご質問が
出てくるわけですね。

では、なぜニーズ調査をしても
学習者のニーズやウォンツが
はっきりと出てきにくいのか。

ここから言うことは、信じられない
かもしれませんが、本当で、

しかもすごく大事なこと。

それは、実は、学習者自身が自分
自身のニーズやウォンツを明確に
把握できていない、

そのため、明確に言語化できない
からなのです。

もちろん、学習者によっては
ニーズもウォンツも明確に言語化
できるケースもあります。

そういう学習者なら、まったく問題
ありません。

ですが、多くの学習者は、自分の
ニーズに対して

「普段の生活で、何か無性に不完全
燃焼感を感じていて、

その原因はおそらく日本語力不足
だろうと思うんだけど、

具体的にどれくらいの日本語力が
身につけば、この居心地の悪さが
解消されるのかまでは分からない。」

というのが本音だったりするわけです。

ましてや、その手段としてのウォンツ
については、日本語教育の専門家でも
ないわけですから、

適切な手段を合理的判断に基づいて
選ぶなど、とても難しかったりする
のです。

かくして、学習者の中には

「旦那のお姑さんとうまくいかない
のは、きっと私の日本語力が低い
からだろうから、

日本語能力試験N3に合格したい
です。」

のようなことを言ったりするのです。

でも、本当の理由は、そのお姑さんが
話す方言が分からないからであったり、

単に愛想がないからだったりするの
です。

こうしたことは、何も外国人日本語
学習者に限ったことではなく、

例えば、外国人を雇用する日本企業
でも、

「弊社は、仕事では高いコミュニケー
ション力が必要だから、

外国人社員は、日本語能力試験N1
合格を採用条件とする。」

といったところがあるようですが、

そもそも、

「高いコミュニケーション力」の定義
や中身がはっきりしていなかったり、
(つまりニーズが分かっていない)

日本語能力試験N1が何を測る試験
なのかも把握していなかったり、

すなわち、ウォンツがずれていたり
するわけですね。

それぐらい、自分自身のニーズやウォ
ンツを明確に言語化するということは、
決して簡単なことではないのです。

では、学習者の真のニーズやウォンツ
を引き出すには、どうしたらいいので
しょうか。

続きは、次回に。


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