2誌合同。「日本語教育有識者会議」を読む(14)

引き続き、

「日本語教育の質の維持向上の仕組みに
 ついて(報告)(素案) 」
 https://bit.ly/3hxTout

を2誌合同で解説していきます。

2誌連番で解説いたしますので、片方しか
登録していない方は、両メルマガをご登録
なさるか、

下記サイトをご参照ください。

篠研の日本語教育能力検定試験対策
https://www.kanjifumi.jp/kentei/
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また、かなり膨大な資料ですので、かいつま
んだ解説となることを予めお伝えしておきま
す。

詳しくは、上記資料をご参照ください。

第14回は、

「3.日本語教師の国家資格に関すること」

です。

そのうち、今回は

「(2)教育実習の実施機関」

を扱います。

全体の印象としては、実習内容自体は割と
オーソドックスなものかと思います。

ただし、これまで教壇実習をしたことが
ない機関がこれをするとなると、

▼キーマンの確保

が大きなハードルになるかと思います。

以下。

--------------------

(2)教育実習の実施機関

(実践的な教育実習)

○ 令和3年協力者会議報告では、日本語教師
 の資格取得に当たり、

 「日本語教師に必要な技能・態度に含まれる
  実践力を身に付けるため、教育実習を履修
  することが必要」

 とされており、実習内容や担当教員数等が示
 されている。

 日本語教員の登録については、試験の合格と
 ともに、

 日本語教育を行うために必要な実践力を身に
 付けるための教育実習を求めることとし、

 教育実習について、文部科学大臣の指定を受
 けた機関が教育実習を実施するための質を充
 実・改善するための仕組みとして次のような
 基準等を検討する。

○ 資格取得の要件として筆記試験とともに必
 須となる教育実習は、日本語教師に求められ
 る資質・能力のうち、

 日本語教師に必要な基礎的な技能・態度に含
 まれる実践力として不可欠なものとして、

 平成 31 年審議会報告において提示された日
 本語学習を想定して行う実際の指導及びそれ
 に関連する授業などの教育実習の指導内容、
 指導時間数、指導体制、評価の在り方などを
 検討する。

○ 指定日本語教師養成機関において教壇実習
 を行う場合は、

 教育実習担当教員の下に責任を持って教壇実
 習を行う機関内の体制を明確化するとともに、

 指定日本語教師養成機関外で教壇実習を行う
 場合についても、

 教育実習担当教員と教壇実習指導者の役割分
 担を明確にし、

 当該養成機関の責任の下で実習機関も含めて
 一体的に質を確保する指導体制を置くことを
 前提に検討する。

・ 大学等における教育実習(1単位以上)
  ※1単位は 45 時間の学修を必要とする内
   容をもって構成することが標準(大学設
   置基準)

・ 専門学校等における教育実習(45 単位時間
 以上)

 ※1単位時間は 45 分以上
 ※具体的な審査基準については、以下イメー
  ジをもとに、必要な方向性などをさらに検
  討する。以下は主なものを記載。

     ― ― ― ― ― ―

【教育実習内容】

・原則として対面で以下の内容を学習する。

 ただし、双方向で行われる

 1.オリエンテーション:目的、学習者の
   ニーズ分析、構成要素と内容、学習者、
   コースカリキュラム、教材分析

 2.授業見学:指導の流れ、学習者観察の視
   点、授業分析評価の観点

 3.授業準備:指導項目の分析、教案作成、
   教材教具準備

 4.模擬授業:授業計画や教材・指導方法等
   の妥当性を検討することを主な目的とし
   たシミュレーション。

   模擬授業は複数回実践し、振り返りを行
   う。

 5.教壇実習:1単位時間の指導2回を含む、
   複数回の教壇実習を実施

 6.教育実習全体の振り返り:準備から授業
   報告までの一連の流れを振り返るととも
   に、学習者評価・教師評価・授業評価を
   行い、授業改善の手法を学ぶ。

・対面のクラス指導以外の授業内容に応じた形
 態(個別指導、一対一の指導等、オンライン)、
 対象別、レベル別、言語活動別の指導力を育
 成する多様な教育実習が設計されることが望
 ましい。

・実習授業の方法として、オンラインで対応可
 能な範囲を検討する。

 その場合、多様なメディアを高度に利用して
 行うオンライン授業については、同時かつ双
 方向に行われるもの、

 毎回の授業の実施に当たって、当該授業を行
 う教員が当該授業の終了後に適切な方法で設
 問回答、添削指導、質疑応答等による十分な
 指導を併せて行うこと、

 生徒の意見交換の機会を確保するなど、面接
 授業に相当する教育効果を有すると認めた授
 業を実施できることを前提に検討する。

・オンライン授業で指導することも想定し、5.
 教壇実習においても対面型とオンライン授業
 ができることも重要であり、

 オンラインでの実習も含める方向で検討する。

【教員の要件】

1.専任(常勤)の教育実習担当教員を1名以上
  配置

2.教育実習担当教員の要件

・教育実習を実施する学科等の組織に所属

・日本語教育に関する学位等の資格(登録日本
 語教員であることが望ましい)

・教育法に関する教育・研究上の業績・実績又
 は実務上の実績

・教育実習内容の編成に参画

・複数配置する場合、必須の教育内容を指導す
 るために必要な専門的指導を行う者で構成

3.教壇実習指導者は、平成 31 年審議会報告
 において示された日本語教師に必要な技能・
 態度に含まれる実践力を備えた実務経験を有
 する「中堅」の段階以上にある者

【教壇実習】

・原則として5名以上の日本語学習者に対する
 クラス指導で、実習生一人につき1単位時間
 以上の指導2回以上を実施

・大学等の指定日本語教師養成機関における教
 育実習担当者と教壇実習指導者が異なる場合、
 連携の在り方や、機関内の体制を明確にする
 こと

・教壇実習施設が実習実施機関と別にある場合
 は、教壇実習指導者を 1 名以上配置し、

 1 名あたりの教壇実習指導者が担当する実習
 生は年に最大 20 人までとし、

 実習の質の維持向上を図る体制を含め、その
 具体的な連携など運用の在り方とともに検討
 する。

・教育機関が定めたシラバス・カリキュラムに
 のっとり行われるクラス形式の授業を経験す
 ることとする。

・教壇実習の対象となる学習者は、日本語を母
 語としない者とし、教壇実習の内容レベルに
 あった者とする。

・教壇実習の実施に際しては、次のような教壇
 実習施設を利用。

(例) 指定日本語教師養成機関内の教壇実習の
  ほか、指定日本語教師養成機関外で想定さ
  れる教壇実習施設

・認定を受けた日本語教育機関に設置された
 コース

・地方公共団体が主催する地域日本語教室の
 コース ※1

・小・中・高等学校等の実習施設における自治
 体や学校法人と連携した児童生徒に対する
 コース ※2

・企業・事業者等と連携した就労者向けコース

・指定日本語教師養成機関が海外の大学等と提
 携した留学前日本語コース

※上記のコース例について、実習機関と受け入
 れ先となる機関等の実態等を踏まえた内容・
 体制などの在り方を別途検討する。

※1 地方公共団体、関係団体等で生活者のため
  の日本語教育を実施している機関が、大学
  等養成機関とパートナーシップを形成し、
  将来的には地域の生活・就労支援を支える
  人材の養成・確保につながる可能性を視野に、
  地方公共団体における理解・協力が得られる
  よう国が十分に説明など、今後の対応を別途
  検討する。

※2 小・中・高等学校等における実習指導につ
  いて、日本語教師の「中堅」に該当する者が
  いない場合、「教壇実習指導者」として認定
  するのが難しいため、学校における実習指導
  については別途検討する。

【教育実習の評価・公表】

・ 各機関において質の保証のため教育内容や受
 講料等の適切な評価項目・評価基準を定めて、

 専任の教育実習担当教員及び教壇実習指導者が
 行い、必ず課程・実習責任者が評価決定の最終
 確認を行う。

・ 教育実習の実施機関は、実習計画の概要、実
 習指導体制と方法の概要、教壇実習施設との連
 携の概要、評価方法の概要、受講料等を公表す
 る。

・ 各年度の教育実習受け入れ数、修了者数等につ
 いて、定性的な評価とともに公表する。

【定期報告等】

・指定後も一定の水準が維持されるよう、教育
 活動の状況に関する国への定期報告を行い、
 指導・助言の端緒とするとともに、必要に応
 じて改善等を促す。
--------------------

まずもって押さえておくべきことは、
実習実施機関にとって教壇実習は、

それほど利益率の高い事業ではない
ということです。

なので、上記条件をクリアし、教壇実習を
しようとする教育機関がどれだけ出てくるか。

関東、関西、福岡、名古屋といった大都市圏は、
問題ないと思いますが、

それ以外の地方においては、実習先の確保が
なかなか大変になるのではないかと思います。

結果、日本語教師は大都市圏に集中し、
地方では相変わらず日本語教師不足となって
しまう可能性が高いように思います。

それはおそらく国や検討委員の先生方も充分
把握なさっていて、

「・オンライン授業で指導することも想定し、5.
 教壇実習においても対面型とオンライン授業
 ができることも重要であり、

 オンラインでの実習も含める方向で検討する。」

というところで、何とか活路を見出そうと
しているようにも思います。

ただ、もしかしたら地方でも日本語教員養成を
している国公立大においては、

(もしかしたら国からの圧力もあって)

地元の自治体と連携で教壇実習をする動きが
出てくるかもしれません。

とはいえ、地方だと日本語教師としての就職先
がままならないところも少なくないので、

自治体が毎年一定数の日本語教師を新卒採用で
もしない限り、学生の負担が増えるだけのよう
な気もします。

また、細かい話になるかもしれませんが、
これまで文科省は、学習者の類型をあくまで
「留学」「就労」「生活」として、

外国人児童生徒を対象とする「就学」の設定
を頑なに拒んできたにもかからわらず、

実習先の1つとして、

「・小・中・高等学校等の実習施設における自治
  体や学校法人と連携した児童生徒に対する
  コース」

を挙げているのは、どういうこと?と思います。

「外国人児童専門の教員養成にはリソースを
 割きたくないが、

 現場を手伝ってくれるんならいいよ。」

とでも言いたいのかと勘ぐってしまいます。

もちろん本議論はまだ緒に就いたばかりで、
これから細かいところまで詰めた議論が展開
されていくと思いますが、

いずれにしても、私たちとしては、一喜一憂
することなく、

日々絶えず研鑽を積みながら、どのような
状況になってもしっかり食べていけるように、

活動範囲を広げていくということが、重要
なのではないかと思います。


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