『日本語教育の参照枠』を読む。(その13)
前回に引き続き
『日本語教育の参照枠報告』
 https://qr.paps.jp/ShqFB
今回は、その13回目。
日本語力をいかにいかに適正かつ
迅速に評価できるかは、
『参照枠』が広く社会に受け入れて
もらえるか否かを決める非常に重要な
要素。
私達もここをしっかり理解して
おかないと、社会的信用を落として
しまいます。
それだけに、本章はしっかり読み込んで
おきたいですね。
というわけで、
今日は、
「III 日本語能力評価について 」
の
「2 「日本語教育の参照枠」における日本語
 能力観及び評価の考え方」
の
「(1)日本語能力観について」
から
「(3)客観的に日本語能力を測定する上で
 の評価の基礎的な概念」
までです。
以下。
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2 「日本語教育の参照枠」における日本
 語能力観と評価の考え方
(1)日本語能力観について
○ 評価を行うに当たっては、その対象と
なる日本語能力をどのように捉えるかとい
う能力観を明確にする必要がある。
「日本語教育の参照枠」では、日本語能力
観について、
行動中心アプローチに基づき日本語の熟達
度を五つの言語活動ごとに示し、
必要なことから学んでいくことを重視する
とした。
○ 行動中心アプローチとは、多様な背景
を持つ言語使用者及び学習者を、
生活、就労、教育等の場面において、様々
な言語的/非言語的な課題(tasks)を遂行
する社会的存在として捉える考え方のこと
である。
○ 課題(tasks)には、社会の中で目的を
持って行う言語的/非言語的行動の全てが
含まれる。
買い物をすること、交通機関を利用するこ
と、娯楽として映画や読書を楽しむこと、
地域社会・学校・職場などでより良い人間
関係を構築すること、
職を得て働き収入・やりがいを得ていくこ
と、
教育を受け教養を身に付けることなど、多
岐にわたる。
○ 行動中心アプローチにおける言語教育の
目標とは、言語使用者及び学習者がそれぞ
れの社会で求められる課題を遂行できるよ
うになることである。
したがって、言語使用者及び学習者は、文
法や語彙の難易度、言語活動間のバランス
にかかわらず、
課題を遂行するために必要な事柄(特定の
技能領域または言語活動など)から学ぶこ
とができる。
(2)言語使用者及び学習者の言語能力熟
   達度を構成する能力
○ CEFR(2001)では、
 「人間の全ての能力は、言語使用者がコミュ
  ニケーションを行う力に何らかの形で寄与
  することから、あらゆる能力はコミュニ
  ケーション能力の一部と考えてよい。
  それでも、言語とはそれほど緊密に関わら
  ないものを、狭義の言語能力の範疇に含ま
  れるものから区別することは意義あること
  だろう。」
 として、言語使用者及び学習者の言語能力熟
 達度を構成する能力を、次の四つに整理して
 示している。
1 一般的能力
 一般的能力とは、叙述的知識(世界・社会文
 化・異文化などについての知識)、技能とノ
 ウ・ハウ(生活や余暇・社会的・異文化間・
 職業的な技能)、実存的能力(態度・動機・
 価値観・信条・認知的スタイル・性格)、学
 習能力(言語とコミュニケーションに関する
 意識・音声意識と技能・学習技能・発見技能)
 から構成される。
2 コミュニケーション言語能力
 コミュニケーション言語能力は、語彙、音韻、
 統語論に関する知識や技能である言語能力、
 言語の社会文化的な条件下での言語使用と関
 連する社会言語能力、談話の構成能力のよう
 な言語素材を使うときの機能面に関する能力
 である言語運用能力から構成される。
 「日本語教育の参照枠」では、これらの能力
 に基づき「能力 Can do」を示している。
3 コミュニケーション言語活動
 言語活動は、受容、産出、やり取り、仲介の
 四つのモードから構成される。
 「日本語教育の参照枠」では、コミュニケー
 ション言語活動として五つの言語活動(受容
 :「聞くこと」及び「読むこと」、産出:
 「話すこと(発表)」及び「書くこと」、や
 り取り:「話すこと(やり取り)」)につい
 ての言語能力記述文を「活動 Can do」として
 示している。
4 コミュニケーション言語方略
 方略とは、言語活動を行う上で駆使する、分
 からない言葉などに対する推測や質問、聞き
 取りにくい言葉について聞き返したりする行
 動を指す。
 また、コミュニケーション言語方略は四つの
 モード(受容、産出、やり取り、仲介)ごと
 に整理することができる。
 「日本語教育の参照枠」では、受容、産出、
 やり取りについて「方略 Can do」を示して
 いる。
○ 1から4のうち、日本語能力として評価の
対象となるのは2、3、4であり、
「日本語教育の参照枠」では、2、3、4の
能力を表す言語能力記述文(Can do)を示し
ている。
表1 CEFR例示的能力記述文一覧の構成
https://00m.in/Kg0JH
(3)客観的に日本語能力を測定する上での評
  価の基礎的な概念
○ 日本語能力を測定する際には、その原則と
なる基礎的な概念について整理しておく必要が
ある。
CEFR(2001)では、評価の議論には、伝統
的に基本となる以下の三つの概念があるとして
いる。
この三つの概念は主に試験などで客観的に日本
語能力を測る際の原則となるものである。
さらに細分化したものについては
「3 日本語能力判定のための試験等について
 (3)試験開発に関する基本的な考え方」
で詳述する。
◎妥当性(validity)
その評価の手法が、当該の状況で、測定目的と
したものと、実際に測定しているものとが一致
しているか、またそこで集められた情報が当該
学習者の熟達度を正しく示しているか。
これらを満たす場合に、その試験や評価は妥当
性が高いということができる。
◎信頼性(reliability)
その評価の手法によって、ぶれのない安定的な
評価結果を出すことができるか。
古典的なテスト理論では、試験の測定精度を信
頼性係数(reliability coefficient)で表す。
◎実行可能性(feasibility)
その評価の手法が現実的に実行可能であるか
どうか。
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いかがでしょうか。
かなり抽象的な内容ですので、これらを現場に
落とし込むためには、さらなる具体的な議論が
必要かと思います。
ただ、報告書ではこの後事例が紹介されてい
ますので、
次回、そこでじっくり見ていきましょう。
次回をお楽しみに(^_^)
