「日本語教育の参照枠」と「社会・文化・地域」はどう繋がるか。
シリーズでお届けしている
「日本語教育の参照枠」は日本語教員試験の
5区分とどう繋がるか。
今回(最終回)は、
「日本語教育の参照枠」と「社会・文化・地域」
はどう繋がるか。
です。
まずは、どのようなテーマが扱われているか、
確認しておきましょう。
「必須の教育内容」に掲げられている
「社会・文化・地域」の項目は以下の7つです。
<1>世界と日本の社会と文化
<2>日本の在留外国人施策
<3>多文化共生
<4>日本語教育史
<5>言語政策
<6>日本語の試験
<7>世界と日本の日本語教育事情
これらと「参照枠」の内容を照らし
合わせてみると、
<3>多文化共生
<5>言語政策
あたりが大きく関係します。
具体的には「参照枠」ができた背景、
そして、「参照枠をはじめとする
政府の日本語教育関係施策です。
このあたりは「はじめに」でしっかり
紹介されています。
背景から言うと、
・我が国に在留する外国人は、令和元年
末には約293万人(総人口の約2.32%)
に上り、過去最高を記録。
・日本で就労する外国人も令和2年10月
末時点で約172万人と過去最高。
・海外の日本語学習者数は約385万人。
・出身国・地域、文化、年齢、在留資格、
職業、滞在目的等の多様化が進み、日
本語の学習を希望する外国人等が望む
日本語教育も多様化する一方で、それ
に対応した国内外における多様な学び
の連関を図ることが課題。
・各試験が判定する日本語能力について
の共通の指標を整備し、利用できるよ
うにすることが必要。
・日本語の熟達度を判定する共通かつ簡
易な評価指標がなく、評価ツールなど
も整備されていないことが課題。
・パフォーマンス評価の方法と事例及び
ポートフォリオによる評価や自己評価
などの多様な評価の方法と事例につい
ても幅広く示していくことが求められ
ている。
そして、こうした状況に対する政府の施
策が以下のように紹介されています。
・文化庁は、「日本語教育の推進に向け
た基本的な考え方と論点の整理につい
て」(平成25年2月18日報告)を取り
まとめた。
・政府は、「外国人材の受入れ・共生の
ための総合的対応策」(平成30年関係
閣僚会議決定、令和元年、令和2年、
令和3年改訂)を取りまとめ、第二言
語としての日本語を習得できるように
することが極めて重要とされた。
・令和元年公布・施行「日本語教育の推
進に関する法律」第22条においては、
「日本語教育を受ける者の日本語能力
に応じた効果的かつ適切な教育が行わ
れるよう、教育課程の編成に係る指針
の策定、指導方法及び教材の開発・普
及並びにその支援その他の必要な施策
を講ずる」旨の規定が盛り込まれた。
そして、
・政府は、この法律に基づき、「日本語
教育の推進に関する施策を総合的かつ
効果的に推進するための基本的な方針」
を令和2年閣議決定し、「ヨーロッパ
言語共通参照枠(CEFR。)を参考
に、「日本語教育の参照枠」を作成す
ることとした。
・以上を踏まえ、「日本語教育の参照枠」
の取りまとめに至った。
この流れをまず押さえることが重要です。
そして、さらに重要なことは、
「参照枠」で紹介されている分野別の
言語能力記述文に関係する動き。
・国際交流基金「JF日本語教育スタン
ダード」
を筆頭に、
生活Can doであれば、
・国際交流基金「JF生活日本語Can-do」
・文化庁「生活Can do」
就労Can doであれば、
・厚生労働省「就労場面に必要な日本語
能力の目標設定ツール」
留学Can doであれば、
・日本語教育振興協会
「留学分野のCan do」
は、絶対押さえておくべき資料です。
これらのCan doは、それぞれ微妙に
構成が違います。
特にユニークなのが厚労省のCan do。
「聞くこと」や「話すこと」などに
加え、
「オンライン」という項目があります。
こういうのもしっかり押さえておか
ないと、
さまざまなCan doが比較対照されて
出題された時に、対応できなくなる
んですね。
「参照枠」をマスターするには、
「参照枠」だけ読んでいては不十分
なのです。
次回、8月23日(土)・24日(日)
は、今年最後の「参照枠」セミナー。
ご準備ができましたら、改めて
ご案内いたしますね。