「日本語教育推進基本方針」(令和7年改定)を読む(その5)

今回も

日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ
効果的に推進するための基本的な方針
https://www.mext.go.jp/a_menu/nihongo_kyoiku/mext_03336.html

5回目の今日は、

「第2章 日本語教育の推進の内容に関する事項」

の中の

1 日本語教育の機会の拡充

(1)国内における日本語教育の機会の拡充

の中の

 イ 外国人留学生等に対する日本語教育

 ウ 外国人等である被用者等に対する日本語教育

です。

特にイは、多くの日本語教師の方に関わること
だと思います。

また、近年、外国人労働者の方も急激に増えて
いますので、

ウも大いにかかわる内容でしょう。

しっかり読んで、時代を先取りしてくださいね。

以下。

====================

イ 外国人留学生等に対する日本語教育

 在留資格「留学」により、我が国に在住する
外国人留学生(以下「留学生」という。)は約
40.2万人(令和6年末)となっており、増加傾
向にある。

留学生は、留学を通して高度な知識・技能を身
に付けた専門性を有する人材であり、

日本の社会や文化への理解も深まっていること
から、

留学を終えた後の日本国内への定着・活躍が期
待される。

 また、日本語教育機関認定法の制定と、これ
に伴う「出入国管理及び難民認定法第七条第一
項第二号の基準を定める省令」(平成2年法務
省令第16号)の改正により、

同法第2条第1項に基づき文部科学大臣の認定
を受けた日本語教育機関(以下「認定日本語教
育機関」という。)であることが留学生に対し
日本語教育を実施する要件とされ、

留学生に対する日本語教育の質の維持向上が図
られている。

留学生のうち、日本国内での就職や研究を希望
する者がその希望を叶えて活躍することができ
るよう、

職場等において円滑に意思疎通を図り、日常生
活を送るために必要な日本語能力のほか、

業務に必要な日本語能力の習得等、留学生に対
する支援の充実のために必要な施策を講ずる。

【具体的施策例】

・認定日本語教育機関が企業や地方公共団体、
 大学・専門学校等と連携し、

 教育投資を得ながら質の高い日本語教育を提
 供するモデルの構築・普及等により、

 認定日本語教育機関の教育の質の更なる向上
 や、認定日本語教育機関における留学生の国
 内進学・就職等のモデルの構築を推進・支援
 する。

・大学が企業等と連携し、留学生に対する「日
 本語教育」、「キャリア教育(日本企業論
 等)」、「インターンシップ」を一体として
 提供する質の高い教育プログラムを文部科学
 省が認定し、

 留学生の国内企業等への就職につなげる仕組
 みを全国展開する。

・専修学校が日本語教育機関及び産業界等との
 連携によって留学生への日本語教育や円滑な
 就職及び定着に向けた体制整備等を行う、
 留学生受入れモデルの構築を推進する。

・企業から採用内定を得た留学生等に対して、
 職場において円滑に定着するために必要なコ
 ミュニケーション能力の向上や日本の雇用慣
 行、

 労働関係法令、企業文化等コミュニケーショ
 ンを行う上で前提となる知識の習得を目的と
 した研修を実施する。

・留学生を含む外国人等の日本語教育環境を強
 化するため、

 都道府県及び指定都市が行う地域日本語教育
 の総合的な体制づくりを推進する。

 また、留学生を含む外国人等に対する地域に
 おける日本語の学習機会を確保するための取
 組

 及びICTを活用した遠隔教育等の先進的取
 組を支援する。

ウ 外国人等である被用者等に対する日本語教
  育

 我が国の外国人労働者数は約230万人(令和
6年)となり、

身分に基づき在留する者や就労目的で在留が認
められる者、資格外活動等、その内容は様々で
ある。

平成2年の入管法の改正以降、就労目的で来日
する日系人の増加、

平成22年の在留資格「技能実習」の創設及び平
成31年の在留資格「特定技能」の創設等により、

我が国に在留する外国人労働者は増加を続けて
いる。

また、看護・介護分野においては、二国間の経
済連携協定に基づく特例的な受入れ制度により

看護師・介護福祉士候補者が国内の受入施設に
おいて就労・研修活動を行っている。

 日本で働くに当たっては、業務上必要となる
専門的な日本語のほか、

職場において日本語で意思疎通を図ることがで
きるよう、

生活に必要な日本語を身に付けることが必要で
あり、

関係省庁や関係機関が連携し、様々な在留資格
や業種の外国人労働者に対する体系的な日本語
教育の質的及び量的な充実を図ることが重要で
ある。

このため、職務に関連した日本語及び専門分野
に関する日本語や生活に必要な日本語を学習す
る機会の提供等の措置を講ずる。

【具体的施策例】

・経済連携協定に基づく日本国内での日本語研
 修により、

 日常生活や病院・介護施設における就労・研
 修活動に円滑に従事できるよう専門分野に関
 する日本語学習機会を提供する。

・事業主等がその雇用する外国人等に対して職
 務に関連した専門的な知識・技能を習得する
 ための職業訓練として

 専門的な日本語の習得を実施する場合の支援
 を行う。

・看護・介護分野において、外国人が当該専門
 分野に関する日本語能力の向上を図る場合の
 受入施設に対する支援や外国人に対する研修
 等の実施、

 外国人等が介護の日本語学習を自律的に行う
 ための教材開発・運用等の支援を行う。

・特定技能外国人及び育成就労外国人の段階的
 な日本語能力向上のため、

 育成就労開始前、特定技能1号移行時及び特
 定技能2号移行時に一定の日本語能力を求め
 る。

 また、受入れ機関に対し育成就労外国人に認
 定日本語教育機関等における講習機会を提供
 すること等を義務付けるほか、

 受入れ機関が日本語教育支援に積極的に取り
 組むためのインセンティブとなる優良な受入
 れ機関の要件等を設ける。

・特定技能外国人及び育成就労外国人に対し、
 日本語能力向上の機会が適切に提供されるよ
 う、教材開発等の支援を行う。

・身分に基づく在留資格の外国人等を対象に、
 日本における安定的な就労及び職場定着の促
 進を図れるよう、

 コミュニケーション能力の向上や日本の雇用
 慣行、労働関係法令、企業文化等、

 コミュニケーションを行う上で前提となる知
 識の習得を目的とした研修を実施する。

・認定日本語教育機関が企業等と連携し、教育
 投資を得ながら質の高い日本語教育を提供す
 るモデルの構築・普及等により、

 外国人労働者に対する専門的な日本語教育の
 実施を促進する。

・就労者及びその家族を含む外国人等の日本語
 教育環境を強化するため、

 都道府県及び指定都市が行う地域日本語教育
 の総合的な体制づくりを推進する。

 また、就労者及びその家族を含む外国人等に
 対する地域における日本語の学習機会を確保
 するための取組及びICTを活用した遠隔教
 育等の先進的取組を支援する。

====================

企業や自治体、大学等に認定日本語教育機関に
投資を促すという取り組みは、

正直どうかなぁという気が若干しています。

そもそも投資ということは、日本語学校の
株を取得するということだと思いますが、

日本語学校の7割が株式会社立とはいえ、
そのほとんどは未公開株だと思いますので、

どうやって投資に結び付けていくのか、
私にはちょっと見えてきません。

また、企業側からしても、どんな人材を、
どれだけ恒常的に送り込んでくれるか
分からない日本語学校に投資するよりも、

優秀な学生に奨学金という形で一本釣り
する方がはるかに確実です。

また、自治体はそもそもお金がありませんし、
特定の民間の日本語学校に投資するというの
は、

公共の立場から言ってどうかなぁと感じます。

ただ、自治体の中には、大崎日本語学校
のように、公立の日本語学校を立ち上げる
ところも出てきており、

こうした形で日本語教育に関わるのはあり
かと思います。

ウについていえば、

> 受入れ機関に対し育成就労外国人に認
> 定日本語教育機関等における講習機会を提供
> すること等を義務付ける

というのは、かなりインパクトがあると思い
ます。

ただ、そうなれば、認定日本語教育機関(就労)
が全国津々浦々にないと厳しいでしょう。

現在、認定日本語教育機関(就労)で認可を
受けているのは、

・公益社団法人国際日本語普及協会(AJALT)
・JICE 日本語教育・就労支援センター

の2つのみです。

それぞれ定員が40と415ですので、全く足りま
せん。

2027年の半ばまでには育成就労法が施行され
ますので、

それまでには、数万人の受け皿を用意して
おかなければなりません。

どうなるのでしょうか。


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