引用表示なしの「盗用」は一発アウト−著作権の話。
著作権に関する教育現場での指導の
1つに
「適切な引用表示」
があります。
適切な引用表示とは、レポートや論文で
文献の一節を引用するときに、
「ここからここまでが引用ですよ。」
と、読み手にわかるように表示する
ことです。
これをちゃんとせずに、さも自分が
考えた文章であるかのように表示すると
【盗用】
とみなされます。
これを学位論文でやってしまうと、
一発アウト。
学位授与が取り消されます。
例えば、こんなニュースがあります。
研究不正行為(盗用)の認定並びに修士の
学位及び課程修了の取消しについて
:筑波大学
https://www.tsukuba.ac.jp/news/20230622152148.html
それだけに、私たち教師は引用について
正しい知識を持ち、
学習者にもしっかり指導したいところ
です。
では、著作権法では「引用」をどのように
扱っているのでしょうか。
以下、通信講座の講義資料
「No.077 著作権」
より。
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引用の扱い方
著作権法第32条第1項では、引用の利用と定義
について、以下のように規定しています。
(13)第三十二条 公表された著作物は、引用し
て利用することができる。この場合におい
て、その引用は、公正な慣行に合致するも
のであり、かつ、報道、批評、研究その他
の引用の目的上正当な範囲内で行なわれる
ものでなければならない。
(デジタル庁ホームページより)
このように、公表された著作物は、引用して利
用することができます。
これは、印刷物であってもインターネット上の情
報であっても同じです。
ただし、引用による利用には、一定の要件があり
ます。
上野(2021)は適法に引用するための要件として8
項目をあげています。
(14)(1)明瞭区別性
(2)主従関係
(3)公表された著作物であること
(4)公正な慣行に合致すること
(5)引用の目的上正当な範囲内で行われるこ
と
(6)出所明示義務
(7)改変の禁止
(8)その他(pp.166-181)
「(1)明瞭区別性」とは、
「〔パロディ・モンタージュ事件〕で最高裁が述べ
た『引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用
する側の著作物と、引用されて利用される側の著作
物とを明確に区別して認識することができ』ること、
という要件」(上野(2021)p.166)
を言います。
例えば、レポートや論文の作成指導において、引用
する際は必ず引用箇所を鍵括弧(「」)でくくる、
文章量が多い場合は引用部分の前後を1行分空け、
かつ行頭を1文字分下げて表示するなどして引用箇
所が一目でわかるよう指導することが必要です。
逆に、引用箇所であることを明記せず、さも自身の
文章であるかのように書いてしまうと、盗用とみな
される可能性があります。
「(2)主従関係」とは、「引用して利用する側の
著作物と引用されて利用される側の著作物との間に、
前者が主(メイン)、後者が従(サブ)の関係があ
ること」(上野(2021)p.168)を言います。
ただし、引用箇所がどれくらいの分量になると適法
から外れるかについては、明確な数値基準があるわ
けではなく(同上。p.171)、
両著作物の関係や目的などから総合的に判断されま
す。
いずれにしても、論文の内容の大半が引用で、筆者
独自の言説(主張、分析、考察など)が極めて少な
い場合、
論文として認められない可能性があります。
参考文献
上野達弘(2021)『教育現場と研究者のための著作権
ガイド』有斐閣
デジタル庁>e-GOV法令検索>知的財産基本法
:https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000122
(2025年4月22日閲覧)
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いかがでしょうか。
中には、こうした引用に関する意識が十分
ではなく、
引用表示なしに、安易にネットや論文の
一部をコピペしてレポートを書いてしまう
学習者もいます。
しかし、そんなことをしてしまうと「盗用」
という、重大な罪を犯してしまうことに
繋がるんですね。
そうならないためにも、私たち教師は引用に
関するしっかりした知識を持ち、
指導に当たりたいものだと思います。