「雨が降るそうです」が例文として不適切な理由。
以前読んだこちらの書籍より。
『文法コロケーションハンドブック』
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ところで、「そうです(伝聞)」を導入
するとき、
皆さんは、どのような例文を学習者に
提示しますか。
よくあるのが、
「天気予報によると、明日は雨が降るそうです。」
鉄板ですね^^
試しに、『みんなの日本語II』を開いてみると
「そうです(伝聞)」は以下の例文で提示され
ています。
1.天気予報によると、あしたは寒くなる
そうです。(p.180)
あらかじめお伝えしておきますが、これによって
私は『みんな』を非難しようという気は全くあり
ません。
『みんな』なしでは、本業界の初級日本語は成り
立たないということを、骨の髄まで理解している
つもり。
ただ、『みんな』にかぎらずテキストの日本語と
現実の日本語には、何らかのズレがあるもので
あり、
それを教師は認識して、授業に反映させましょう
ね、という話。
前置きが長くなりましたが、
話を元に戻しまして、
ところが、これをコーパスに基づいたコロケー
ションの視点から見ると、学習者に最初に提示
する例文としては不適切だというわけです。
なぜか。
それを知るために、まず普段の生活で「そうです
(伝聞)」をどんな時に使うか、
試しに例文を3つ手もとの紙にメモしてみてくだ
さい。
考えるだけでは後の考察が不明瞭になりますので、
必ず、紙に筆記具で書いてくださいね。
↓
↓
↓
↓
↓
3つ、書きましたか?
↓
↓
↓
↓
↓
1.●●さんが結婚したそうです。
2.駅前にパスタのおいしい店ができた
そうですよ。
中俣氏の著書では、以下のように指摘して
います。
======ここから===========
教科書の動詞では「結婚する」はかなり使われ
ている。
しかし、「雨が降るそうだ」など天気の話題と
はコーパスの用例ではあまり結びついていない。
これは「寒くなるそうだ」「晴れだそうだ」な
ども同じ。(p.63)
======ここまで===========
なぜでしょうか。
中俣氏は続いて以下のように指摘しています。
======ここから===========
物事の解説や紹介、ガイドという場面で耳より
な情報を伝えるときに使われることが多く、単
なる伝聞情報ではないといえる。(p.63)
======ここまで===========
耳よりな情報。
確かに、そういう使い方が典型的だなぁと
いうのは、直感的に理解できますね。
・天気予報によると、あしたは寒くなる
そうです。
という例文も、文としては決して間違いない
ですし、使わないこともないでしょうが、
・駅前にパスタのおいしい店ができたそう
ですよ。
のほうが、はるかに「そうです」感は出ている
のではないかと思います。
逆に、例えば、
・明日、期末試験があるそうです。
などと言われても、
「そんなのいちいち言われなくても一月前から
知ってるわ。」
となりそうですね(笑)。
セミナーでは、「そうです(伝聞)」は先のパス
タの例文のように、
・名詞修飾節 + 名詞 + ~そうです。
のパターンで使われることが多いということ
でした。
そうすると、「そうです」の導入前に名詞修飾
節を学習しているとより効果的ということですが、
そこをクリアすれば、提示する例文を工夫する
ことで、
本物らしさ(=真正性、オーセンティシティ)
を高めることができますね。
ご自身の授業、そしてテキストを今一度
見直してみてはいかがでしょうか。