『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』を読む(その9)。

『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』を読む

シリーズの9回目。

原典はこちら。

『日本語教育能力の判定に関する報告(案)』
https://bit.ly/39LrGkw

今回は

「II 日本語教師の資格の概要」

のうちの

「2.日本語教師の資格制度の枠組み」

の後半です。

そのうち今回は、

「資格取得要件2:教育実習」

を見ていきます。

実は、今回の新制度の大きな目玉が、この
【教育実習】です。

これまでの制度では、授業実践力の養成
という部分が必ずしも十分ではありません
でした。

例えば、検定試験合格だけだと実際の授業経験が
まったくない状態で現場に立つことになります。

運転免許で言えば、ペーパードライバーのような
もの。

なので、教育機関によっては

「検定試験合格は使い物にならない。」

などと、手厳しい評価をするところもありました。

また、420時間養成講座においても、必要な実習
時間こそ定められていましたが、

その中身については、実施機関に任せられて
いました。

ですので、中には、外国人学習者を特別に集めて
教壇実習をするところもあれば、

講座受講生が学習者役になって模擬授業をする
ことで実習に代えていたところもあったわけです。

つまり、教育実習の質の担保がなされていなかった
わけですね。

しかし、これからは日本語学校だけでなく、自治体
や企業などさまざまな分野から評価を受けることに
なります。

その厳しい評価(と期待)に応えられるためにも、
実践力のある教師の養成が求めらているわけですね。

では、さっそく読んでいきましょう。
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資格取得要件2:教育実習

(1)教育実習実施機関及び指導時間

日本語教師に求められる資質・能力のうち,日本語
教師に必要な技能・態度に含まれる実践力を身に付
けるため,教育実習の履修を必須要件とする。

教育実習実施機関は,大学及び文化庁届出受理日本
語教師養成研修実施機関とし,

教育実習の一部を外部の日本語教育機関等と連携し
て実施することも可能とする。

大学の日本語教師養成課程(主専攻45単位,副専
攻26単位以上)において,教育実習(1単位以上)
を必ず履修し修了することとする。

文化庁届出受理日本語教師養成研修実施機関(420
単位時間以上)において,

教育実習(45単位時間以上)を必ず履修し,成績評
価を受け,修了を認定されることを要件とする。

教育実習の時間数は,最低基準を示すこととする。

1単位時間は45分以上とする。

教壇実習については,大学及び文化庁届出受理日本語
教師養成研修実施機関が設定した機関・団体で実施す
ることとし,

海外における教壇実習も認めることとする。

教育実習実施機関は,留学生に加え,「生活者として
の外国人」や就労者,児童生徒等,海外など,

日本語教師の活動分野となる多様な教育実習現場を設
定するよう努めることとする。

(2)内容

日本語教師の教育実習の内容は,平成31年3月「養
成・研修報告書」に示された

日本語教師の養成修了段階で身に付けておくべき基礎
的な資質・能力を育成するために必ず実施すべき内容
である

「必須の教育内容」の「(28)教育実習」に定められた
指導項目に基づくものとする。

教育実習の指導項目は,(1)~(6)の内容を全て含むこ
ととする。

(1)オリエンテーション
(2)授業見学
(3)授業準備
(4)模擬授業

※授業計画や教材,指導方法などの妥当性を検討す
ることを主な目的として,受講生同士が教員役と
学習者役に分かれるなどして,授業のシミュレー
ションを行う活動を指す。

(5)教壇実習

※現実の日本語学習者に対して,その学習・教育の
効果を狙って,実際に指導を行う活動を指す。

(6)教育実習全体の振り返り

教育実習実施機関によって教育実習の内容や質に
大きな差が生じないように配慮すべきである。

(3)指導方法

原則として対面による指導を行うこととする。

双方向通信が可能なメディア等を利用した遠隔による
教育実習については,採用しないこととする。

今後,将来的な実施に向けて検討が必要である。

(4)教壇実習の指導時間及び対象

教壇実習においては,一人当たり2単位時間の指導を
下限とすることが適当である。

また,1回の指導時間を45分以上とし,45分以下
に細分化することを認めない。

教壇実習の対象となる学習者は,日本語を母語としな
い者とする。

教育機関が定めたシラバス・カリキュラムにのっとっ
て行われるクラス型式の授業を経験することとし,
5名以上に対する指導を行うことが必要である。

大学及び文化庁届出受理日本語教師養成研修実施機関
においては,

その他の授業形態(グループ,マンツーマン等)や,
留学生や「生活者としての外国人」,就労者,児童生
徒等の

活動分野別の教育実習現場を選択的に経験できるよう
にすることや,

レベル別・科目別の指導力を身に付けられるよう努め
ることが望ましい。

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あらためて見ると、かなり細かなところまで内容が
決められ、

しかも、内容的にもかなり盛沢山であることが分か
ります。

時間的制限はもちろんのころ、

▼留学生以外の学習者を対象とした多様な実習を
用意するよう努めること。

▼教壇実習の対象学習者は、非日本語母語話者で
あること。

▼1クラス5名以上の学習者がいること。

▼活動分野別の教育実習現場を選択的に経験できる
ようにするよう努めること。

▼レベル別・科目別の指導力を身に付けられるよう
努めること。

人口の多い都心であればともかく、地方だとこれだけの
条件を揃えられる教育機関がどれだけあるか、やや心配。

当然、文章通りにしようと思えば、養成機関だけでは
なく、自治体やボランティア日本語教室などの協力が
不可欠でしょう。

いずれにしても、新制度での受験を検討しているので
あれば、

単に試験対策だけではなく、教育実習ができる機関が
お住まいの地域にどれくらいあるか、調べておく必要
があるでしょう。

別府大学は、う~む、微妙だなぁ。


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