「技能実習制度のあり方」(たたき台)を読む(その3)。

前々回の続き。

法務省のサイト

技能実習制度及び特定技能制度の在り方
に関する有識者会議(第5回)
https://bit.ly/43rLO7M

より。

第3回の今回も、実際に下記資料をつぶさに
みていこうと思います。

中間報告書 ( たたき 台 )
https://bit.ly/3L6RgpH

このうち、今回は「第3 委員の意見」の中の

「1 技能実習制度と特定技能制度の制度
 趣旨について」を。

ちょっと長い内容ですが、重要な部分ですので
しっかり読んでくださいね。

以下。

===================

1 技能実習制度と特定技能制度の制度趣旨
 について

(1)検討の前提となる基本的な視点に関す
  る有識者会議における主な意見

○農業、水産加工、建設業、縫製業といった
 国内の産業で深刻な人手不足が生じており、

 生産年齢人口も減少に向かっていることも
 明らか。

 技能実習生を受け入れている産業について、
 特定技能制度に吸収するという方法も含め、

 正面から労働者を雇用し、受け入れること
 ができるようにする方策も議論すべき。

○人権重視を大前提として、国際貢献をしっ
 かり果たし、

 なおかつ、国内の人手不足への対策として
 有効な手立てとなるように、

 日本で学び、働きたいと思っている外国人、
 中小企業、それらを受け入れる地域、我が
 国と送出国にとってよりよい制度の有り様
 を検討したい。

○作業範囲や労働時間数の制限の緩和、安定
 的に外国人材が活躍できる環境整備や監理
 団体等による受入れ、支援体制の充実が必
 要。

 これらを実現することにより、事業者と外
 国人材の双方にとって発展的な制度になる。

○外国人労働者を受け入れるための制度の見
 直しに際しては、次の4点を踏まえるべき。

 1.受け入れた際のデメリットが顕在化し
  ないよう、また、社会の分断を招かない
  ような制度設計。

 2.日本人労働者と同じ処遇、生活者とし
  ても必要な支援を受けられること。

 3.外国人労働者の就労ニーズは多様化し
  ており、在留の条件は明確化しつつ、長
  期滞在の道が開かれること。

 4.有期契約から無期契約への転換など外
  国人についてひょうそくがとれているな
  ど、日本の労働市場改革とひょうそくを
  合わせた制度設計。

○これまでは日本は魅力的な働き先であった
 が、今後は外国人から日本が選ばれるよう
 努力すべきことを意識することが必要。

 送出国における賃金も向上しており、近隣
 国との人材獲得競争もある。

 外国人にどのように日本社会になじんでも
 らえるか等の観点から議論することが必要。

○外国人材の定住化、子育てや介護、年金と
 いう今後の暮らしも踏まえた視点が必要。

 定住化や今後の暮らしに関わる見通しも
 持った議論が必要。

○技能実習生が暮らしやすい環境作りには自
 治体が果たす役割が大きい。

 過疎地と都市部、様々あり、自治体の体力
 も違う中で努力をしているが、国と緊密に
 連携して対応することが必要。

 日本がしっかり実習先として選ばれていく
 よう、また、担い手不足の解決にも資する
 よう、制度を見直していくことが必要。

○今回の議論は日本の将来の姿に関わる。

 単なる人手不足対応ではなく長期的な視野
 を持って議論する必要。

 諸外国の事例を含めエビデンスを踏まえた
 政策、EBPMを進めるべき。

○外国人受入れ制度は相互補完関係にある。

 技能実習制度を見直すなら特定技能制度や
 他の制度も含めて改めて考えることが必要。

○産業全体に及ぶ人手不足や処遇改善の原資
 がないという構造的な問題は、産業政策課
 題として、国が解決しなければならない課
 題。

 外国人労働者政策と併せて業所管省庁が産
 業政策等の観点からも検討・連携し、多様
 なステークホルダーと協議した上で、

 どのような施策を講じるかが重要である。

 この視点から、業所管省庁の責任と役割の
 明確化を図るのは重要な課題。

○外国人労働者と雇用企業の2者の関係だけ
 ではなく、産業政策や地域政策といった観
 点も必要。

 人手不足も業界や地域によって異なる中で、
 業界団体や業所管省庁が補助金や支援のス
 キームを業界ごとに作るなど、

 様々なアクターが政策を一体的に組み上げ
 ていくという視点も必要ではないか。

○生活者としての外国人労働者の支援の在り
 方の検討が必要。

 社会保障や言語、教育、公共サービスや多
 文化理解などの環境整備も行っていかなけ
 ればならず、

 そのコストは、事業主が応分の負担をする
 ことを前提に、国、自治体でバランスを
 取った負担の在り方を検討することが必要
 ではないか。

○技能実習生であれ特定技能外国人であれ、
 働く外国人当事者にとって賃金は最大の動
 機であり、

 今回の制度改正においても、賃金の在り方
 は非常に重要な検討課題である。

 特に技能実習生については、各都道府県の
 最低賃金に合わせているのが実態であるが、

 地方の中小企業が人材を確保できる環境を
 整えるには、

 当初の賃金を全国斉一にすべく、補てんの
 仕組みを作るなど、制度的な検討が必要で
 はないか。

○技能実習生が失踪するなどによって制度を
 逸脱した場合のサンクションの在り方につ
 いては、

 一般的に、正規の居場所を失った不法滞在
 の外国人は、事件や事故の被害者にも加害
 者にもなりかねないため、

 いきなり在留資格を失い、不法滞在に陥る
 ということでよいのか、慎重な検討が必要。

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様々な問題点や官民の連携のあり方が
模索されていますが、

問題の根本は、日本の中小零細企業の
人材雇用の認識の甘さと収益性にあると
私は考えています。

まず、私自身、外国人材雇用コーディ
ネーターになってより分かったのですが、

特に地方の中小企業は、人材不足に
悩んでいるにもかかわらず、

人材採用に対する認識がいまだに甘い。

例えば、下記リクルートワークスの調査に
よると、

第39回 ワークス大卒求人倍率調査
(2023年卒)
https://bit.ly/3MZ19Hg

新卒者に対する有効求人倍率は1.58倍。

これだけ見ると、一見さほど採用難とは
言えないように見えます。

ですが、p.2の

「 図表2 従業員規模別 求人倍率の推移」

を見てみると、従業員300人未満の企業に
おける有効求人倍率は5.31倍。

求職者1名に約5.3社が群がる形になってい
ます。

これでは、中小零細企業で新卒者が獲れる
はずがありません。

にもかかわらず、この事実を知らない社長が
思いのほか多いのです。

「ハローワークに出せば何とかなるだろう。」

そう考えて、ハローワークに求人広告を
出すものの、

10年以上採用できていない企業が多いのです。

加えて、収益性の問題。

多くの中小企業は、上位企業の下請け的な
仕事が多いと思われますが、

それでは、いつまでたっても収益性を上げる
ことはできません。

上位企業から仕入れ価格の締付を受けるから
です。

この構造的な枠組みから、社長自ら脱する
努力がやはり必要だろうと思います。

そもそもですが、国や自治体のサポートを
手厚くするということは、

それだけ公的費用が増えるということ。

ですので、国や自治体を動かす以上、
私たち国民は、増税を覚悟しなければなら
ないということです。

だからやめろというのではなく、増税し
てもトータルで国益に繋がるよう制度設計
する必要があると思います。


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