既存の教材を『参照枠』に落とし込む。(その2)
本テーマの2回目。
今回は、
「学習目標の設定」
についてお話します。
ご存じの通り、
『日本語教育の参照枠』(以下、『参照枠』)
 https://00m.in/nMZtU
では、言語能力記述文(Can do)で
学習目標を設定します。
その際、まず押さえておかなければ
ならないのは、
授業で扱う内容、言い換えれば教科書
で扱う内容が、学習者の現実世界で
どう活きてくるのか。
これをはっきりすることです。
『「日本語教育の参照枠」の活用
 のための手引』
 https://00m.in/jyNcJ
のp.18に以下のような記述があります。
———————————————————
コースデザインにおいては、現実世界と
つながるような日本語学習が実現できる
よう努める必要があります。(中略)
言い換えれば、「日本語教育の参照枠
Can do」を踏まえてコースデザインを
行うということは、
日本語学習の段階や目的を問わず、人間
として、社会の構成員として日本語学習
を通して社会に参加する機会を保障する
ことにつながります。
つまり、社会における様々な人々と共生
するために必要となる日本語でのコミュ
ニケーション能力を獲得することを視野
に入れたコースデザインが必要なのです。
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「コースデザイン」という言葉は、
そのまま「授業設計」に置き換えられます。
(ここでは、日々の授業設計もコース
 デザインの一部として捉えて話を
 進めます)
ただ教科書にあるものを伝えるのではなく、
それが学習者の現実世界にどう繋がるのか、
そして、それを最大限活かすために、どの
ような目標設定ができるのか、
それをしっかりイメージすることが大切
なんですね。
そして、次に確認すべきは、レベルと活動
の種類です。
レベルは、『参照枠』内の「全体的な尺度」
にある通り、
▼基礎段階の言語使用者(A1・2)
▼自立した言語使用者(B1・2)
▼熟達した言語使用者(C1・2)
の6段階のいずれかにあたるかということ。
基本的なことですが、ここをしっかり
押さえないと、後の作業のすべてが
狂ってきます。
次に押さえることは、言語活動の種類。
言い換えれば、Can doの種類です。
具体的には、
▼活動Can do
▼方略Can do
▼テクストCan do
▼能力Can do
『参照枠』では、さらに細かな下位項目
が設定されています。
学習目標を設定する際には、指導する
教科書の内容によって、どの言語活動
を扱うのかをはっきりする必要があります。
もちろん、1回の授業で複数のCan do
を立てても問題ありません。
例えば、活動Can doで学習内容を具体的
な活動につなげながら、
能力Can doで文法や撥音といった言語
形式にもしっかり配慮した設計にする。
そんな、バランスの取れたFonFの授業
を設計するのもいいですね。
(FonF:Focus on Form の略。意味重視
 の活動の中で、必要に応じて形式(文
 法・発音など)にも焦点を当てる考え方)
ただし、その際、授業で扱い切れないほど
たくさん盛り込むことのないようにしましょう。
以上を踏まえると、目標設定がかなり
明確になってくると思います。
教科書そのものは文型積み上げ式
であっても、
それを『参照枠』という観点から見直す
ことによって、
新たな価値を創出することができるかも
しれません。
いや、創出することがこれからの教師に
求められる技量なのではないかと思います。
