既存の教材を『参照枠』に落とし込む。(その4)
本テーマの4回目。
今回は、
「指導内容・方法の決定」
についてお話します。
この点について、
『「日本語教育の参照枠」の活用のための手引』
(以下、『手引き』)
https://00m.in/jyNcJ
のp.20で以下のように述べられています。
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学習目標と目標達成を確かめるための評価方法が
決まったら、
その評価でよい成果が得られるようにするために何
を、どのように教える必要があるかを考えます。
まず、コースデザインの調査・分析の段階で得ら
れた情報をもとに、教える内容を選びます。
次に、どのように教えたらコースの目標とする
コミュニケーション能力の育成につながるかを
考えます。
具体的な教え方にはいろいろな方法がありますので、
最も適した方法を選び、
学習目標の達成に向けた具体的な教室活動や教材・
教具の検討を行います。
コミュニケーション能力の養成を目指すのであれば、
語彙や文法の習得を図る活動にとどまらず、
コミュニケーション活動に至る学習経験の道筋を
作ることが必要です。
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ここで注目していただきたいのは、
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コミュニケーション能力の養成を目指すのであれば、
語彙や文法の習得を図る活動にとどまらず、
コミュニケーション活動に至る学習経験の道筋を
作ることが必要です。
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という部分です。
特に、これまでの初級の授業で見られた
文型積み上げ式の授業では、
文型やそれに伴う語彙・表現の習得が
学習目標に掲げられていました。
「うちのクラスの学習者、なかなか
テ形がうまく使えないのよねぇ。」
等と言うのは、こうした発想が根底に
あるからだと思います。
ですが、私たちが目指すべきはそこでは
なく、
文型や語彙・表現の習得の先にある
コミュニケーション能力の養成なんですね。
例えば、動詞のテ形の習得の先にある、
「〜てください。」
という表現を使いながら、
「困った時に簡単に人に依頼することが
できる。」
といったコミュニケーション能力。
これが最終ゴールなわけです。
ここまでやって授業が完結するわけ
なんですね。
ですので、授業のセクションの最初では
必ず学習者にゴール(学習目標)と
評価方法(例:簡単なルーブリック)
を提示し、
授業の最後には、学習目標を達成する
ためのコミュニケーション活動を必ず
入れる。
そして、評価ツールで評価する。
(前回紹介した簡易型ルーブリックなど。)
その上で、そこに至るまでの指導内容と
指導方法をデザインする。
この考え方が必要になってくるのです。
ただ、ここで留意していただきたいのは、
決してこれまでの文型導入や語彙・表現
の導入方法を否定していないということ。
絵カードを使って文型や語彙・表現を
導入するのは、大いに結構。
文型練習も必要であれば大いに結構。
新出文型を導入して、いきなりロール
プレイをするのは、初級の学習者には
負担が大きいです。
今までのやり方を根本から変えると
いうのではなく、
授業の味つけを少し変えるぐらいに
イメージするといいでしょう。
そう考えれば、既存のテキストでも
十分対応できるのではないかと思います。
「篠研サロン−教育実践部」
https://www.kanjifumi.jp/
では、そうした考えのもと、
現場でよく使われているテキストを
使って、『参照枠』の観点から
教材分析と授業研究を行っています。
次回、11月28日は、
『日本語教育の参照枠』に沿った初級授業
−『日本語初級1 大地』の授業研究−
と題して、サロンメンバーが担当した
課ごとに、
バックワードデザインに沿った授業計画を
持ち寄って検討します。
その営みは、まさに
「既存教材のリフレーミング」
「『参照枠』ベースの授業技術を
身につけたい。」
「これからの日本語教育にもしっかり
対応していきたい。」
という方は、ぜひご入会ください。
