既存の教材を『参照枠』に落とし込む。(その5)

本テーマの5回目。

今回は、

「パフォーマンス課題の作成」

についてお話します。

これまでやや抽象的な話をしてきましたが、

実際に『参照枠』の考え方を既存教材に
落とし込もうとしたときに、一番悩むのは、

「パフォーマンス課題をどう設定したら
 いいのか。」

ということではないかと思います。

なぜなら、それがその授業の評価に
つながるからです。

そこで、多くの教材の第1課で
よく取り上げられる

「自己紹介」

を例に考えてみましょう。

これについても

『「日本語教育の参照枠」の活用のための手引』
 (以下、『手引き』)
 https://00m.in/jyNcJ

のp.22-23で例が示されています。

まず、学習目標を以下のように定めます。

=======================

A2.2「話すこと(やり取り)」【会話】 挨拶、
別れ、紹介、感謝などの社会的関係を確立する
ことができる(p.22)
=======================

ここで押さえておきたいのは、学習目標の
構成要素です。

▼レベル(例:A2.2)

▼言語活動の種類(例:話すこと(やり取り))

▼Can do

ここはしっかり押さえておきましょう。

これぐらいの目標設定であれば、既存教材
でもできるでしょう。

次に、パフォーマンス課題の設定です。

=======================

【目標】
簡単な日本語を使って自己紹介ができる。
 友達やクラブ活動の内容について、簡単な
 日本語で紹介することができる。

【文脈をつける】
<役割> あなたは学園祭の案内役で日本語
     クラブの部員。

<聴衆(相手)> 近所に住む同年代の日本人。
     韓国の若者や韓国文化に触れたいと
     思っている。

<状況>学校の学園祭で日本語クラブに来て
     くれた地域の日本人に簡単な 自己
     紹介をし、日本語クラブの部員や活動
     内容についても紹介しなさい。

【パフォーマンスと成果物(例)】
 ・自己紹介(挨拶、名前)、友達紹介の表現を
  練習する。
 ・部活を紹介するための簡単なチラシを作って
  おく。
 ・訪問者の名前と印象を記録しておく。

=======================

目標は、教材や学習者の属性に合わせてアレンジ
するといいでしょう。

「文脈をつける」というと真新しい感じ
に思えるかもしれませんが、

ロールカードの構成要素と考えれば、
従来のロールプレイと変わりません。

こちらも教材や学習者の言語環境に合わせて
アレンジすればいい。

パフォーマンスと成果物についても
一般的な自己紹介タスクの範囲内。

これぐらいであれば、既存教材でも『参照枠』
の考え方に沿って授業ができそうです。

そう考えれば、既存のテキストでも
十分対応できるのではないかと思います。

その上で、学習者には以下のようなロール
カードを提示します。

=======================

<目標> 簡単な日本語を使って自己紹介が
     できる。
     友達やクラブ活動の内容について、
     簡単な日本語で紹介することができる。

 今年の秋の学園祭で、あなたは日本語クラブの
案内役を務めることになりました。今度の学園祭
には、近所に住む日本人コミュニティから、韓国
の若者や韓国文化に関心のある同年代の日本人が
参加してくれます。日本語クラブに来てくれた地
域の日本人に簡単な自己紹介をし、日本語クラブ
の部員やクラブの活動内容のことも紹介してくだ
さい。
(紹介するための方法は自由に考えてよい)
                    p.23
=======================

これを見て、

「Aレベルの学習者にこの日本語を理解させる
 のは無理。」

という方がいらっしゃいますが、心配ご無用。

学習者にスマホのカメラと翻訳アプリを使って
翻訳させればいいのです。

ICT活用ですね(^_^)

教育現場も、こういうICTツールをどんどん
導入していかなければならないのです。

「篠研サロン−教育実践部」
 https://www.kanjifumi.jp/salon_kyouiku/

では、そうした考えのもと、

現場でよく使われているテキストを
使って、『参照枠』の観点から

教材分析と授業研究を行っています。

次回、11月28日は、

『日本語教育の参照枠』に沿った初級授業
 −『日本語初級1 大地』の授業研究−

と題して、サロンメンバーが担当した
課ごとに、

バックワードデザインに沿った授業計画を
持ち寄って検討します。

その営みは、まさに

「既存教材のリフレーミング」

「『参照枠』ベースの授業技術を
 身につけたい。」

「これからの日本語教育にもしっかり
 対応していきたい。」

という方は、ぜひご入会ください。


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