学習者に自分のやり方を押し付けない。(その4)
前回に引き続き
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加茂の教えで目覚めた部員は、
監督に対して罰金制度の不実施
を宣言した。
それに対して、監督は
「罰金制度を否定するのであれば
結果で応えよ。」
として、網掛大との練習試合を組んだ。
網掛大野球部は、常に関西チャンピオン
に輝く強豪校。
不知火大野球部とは格が2枚も上だった。
以前、全国大会ベスト8で不知火大が
勝ったが、
不知火大野球部の部員は異口同音に
「あれはマグレだった。」
と口を揃える。
というのも、網掛大のピッチャー清水
がプロレベルの腕の持ち主。
160km/hの速球に多種多様な変化球を
持ち味にしているエースだからだ。
先日の試合でも、7回から登板。
9回まで投げ、後続全打者をシャット
アウト。
実に8人連続凡退。
勝ったとはいえ、実力の差を感じ
させる試合だった。
だから、不知火大野球部の部員は、
とても勝てないと思い込んでいたのだ。
そんな部員の話を聞いた加茂は、一言。
「クラスター錯覚がひどい。」
クラスター錯覚とは、人間の認知バイアス
の1つ。
クラスター錯覚とは、
サンプルサイズが小さい場合のランダム
分布において必然的に生じるストリーク
(線や筋)やクラスター(群れや塊)を、
ランダムなものではないと誤判断すること
である。−Wikipedia
簡単に言うと、本当は偶然によるもの
なのに、それをあたかも必然によるもの
と錯覚してしまう現象のことを言う。
加茂は続ける。
「たとえばプロ野球
昨年日本一になった阪神の打率が.247
それってつまり日本一のチームの打線
ですら75.3%は凡退するって事だよ
実際 日本シリーズ全7戦で阪神は
8連続以上凡退を5回もやってる
その中には10連続凡退とか
一番ひどいので14連続凡退とかも
含まれている
それだけ連続凡退やりまくって
日本一になったんだから
8連続凡退なんてまったく気にする
事じゃない」
そして、こう締める。
「網掛大が強そうに感じるのはすべて
「クラスター錯覚」のせい
不知火大の力なら十分勝てる」
◆ ◆ ◆
私たちが、日々活動している中で、
「うちの学校はこうだから仕方がない。」
「あの学生は、いつもこうだ。」
そう思うことはないでしょうか。
もちろん、その多くは実際の経験に
基づいて形成されたものでしょうが、
もしかしたら、たまたま起こったことを
さも必然的、固定的なものとしてとらえた
思い込み。
つまり
「クラスター錯覚」
によるものなのかもしれません。
だとすれば、もっと冷静に数値で見て
多面的に物事をとらえ、打開策を考えれば
解決策が生まれてくるかもしれません。
「これは、こうだ。
だから、仕方がない。」
そうやって諦めかけていることは
ありませんか。
