学習者に自分のやり方を押し付けない。(その5)
引き続き
『カモのネギには毒がある』
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不知火大学は、網掛大学との練習試合に
臨む。
網掛大の先発は、エースの清水。
監督曰く、
「さっき敵の練習を見てたが
今日の清水は絶好調だ。
3週間 自己流の調整しか
していないうちのメンバーじゃ
歯が立たんよ。」
そして、プレイボール。
清水の剛速球、確かに絶好調だった。
ところが、3球目。
トップバッターがいきなり
センター前ヒットを放つ。
監督曰く、
「単なるマグレだ…」
続く、2番の野田。
彼の得意はバント。
しかし、清水はそんな野田を
理解しており、
あえてバントを打たせて2塁
をアウトにしようと、
わざとバントしやすい球を
投げた。
そこを野田は、バントと見せ
かけてヒッティングの構え、
バントシフトの裏をかいた
見事なライト前ヒットを放った。
加茂曰く、
「監督、さっきから全然予想が
当たりませんね
実は部員の事なんかろくすっぽ
見てないんじゃないですか?」
さらに、5番の吉井がライトの
頭上を越えるヒット、2人が帰り
初回いきなり清水から2点を
先制した。
その後、不知火大学は2回に1点、
3回にも3点を追加し、
3回途中で清水をマウンドから
引きずり下ろした。
実は、今回の不知火大の大躍進
には理由があった。
これまで監督の指示に従う
だけだった部員は、
学びの大切さを知ったことで、
初めて自分たちの力で勝つ道筋
を模索したのだ。
ある者は図書館に行ってバッティング
理論の本を読みあさり、
ある者は社会人野球の指導者を訪ね
バッティングフォームを見てもらい、
そして、ある者は網掛大まで出向いて
練習を偵察し、選手のデータを集めた。
加茂曰く、
「これこそが学びですよ。」
試合中盤、網掛大も怒涛の猛攻で
追い上げたが、
結果は、11対7で不知火大の勝利と
なった。
◆ ◆ ◆
私たち教師には、日本語教師としての
専門知識があります。
また、これまで培った経験値もあります。
たくさんの学習者も見てきていますから、
目標に到達するためには、
どんな方法で、どれくらいの努力が必要か
も大方見当がつきます。
そして、そうして得た知識と経験を目の前
の学習者に提供する。
そのこと自体は、大変いいことだと
思います。
しかし、それよりも何よりも重要なこと。
それは、
「学習者の能力を伸ばすには、
教えること以上に学ばせることが
重要である。」
ということです。
これは、決して教えることを否定している
わけではありません。
教えることも、もちろん重要。
しかし、それ以上に重要なのは、
学習者が自ら進んで学ぼうとすること。
ここに至れば、学びは悦びとなり、
学習者はどんどん学習するように
なるのです。
そのために、教師にとって気をつけなければ
ならないことは何でしょうか。
