読解力の高い学習者と低い学習者の読みの特徴。

昨日は床屋と抜歯の間に、

通信講座「篠研の日本語教育能力検定試験」
の講義資料

「No.040 レベル別読解指導法」

の改訂作業をしました。

平成29年から令和2年の過去問のうち、
読解指導に関する出題は、

平成29年 試験I 問題10
令和元年 試験I 問題9

で出題されています。

特に、平成29年の問題は、学習者の読み
の特徴と、

それを踏まえた適切な読解指導法に触れ
られていて、

読解指導について大変示唆に富む内容
でした。

過去問では、読解力の低い学習者の特徴
として、

「テクストの中の未知語の意味に注目し
ながら読む」

ということあげていました。

「じゃあ、読解力の高い学習者は?」

と思い調べたところ、以下の論文に行き
着きました。

舘岡洋子(2001)「読解過程における自問
自答と問題解決方略」日本語教育学会
『日本語教育』111号 pp.66-75

この論文を踏まえ、講義資料に以下の文
章を追加。

===================

舘岡(2001)は、読解中に考えたことをその
まま発話し、その発話内容を分析する発話
プロトコル法という分析方法を使って、

読解力の高い学習者と低い学習者で読解活
動に行う自問自答にどのような違いがある
か調べました。

その結果、読解力の低い学習者は未知語の
意味など知識の有無を問題とする「ローカ
ルな問い」が圧倒的に多かった一方、

読解力の高い学習者は、例えば「なぜここ
に集まるのか」など、

前後の情報や背景知識を統合しながら文章
の意味の理解を問題とする「グローバルな
問い」が多いことが分かりました。

このことから、舘岡(2001)はグローバルな
自問ができない学習者には、グローバルな
設問を与えることが有効であると結論付け
ています。

-講義資料「No.040 レベル別読解指導」
p.9

===================

つまり、読解力の低い学習者は、文章の
字面の理解に集中し、

読解力の高い学習者は、自分の知識と照
合しながら、文章の内容の理解に集中し
ているのです。

このように言うと、

「そりゃ、読解力の高い学習者は、語彙
力も豊富だろうから、字面の理解に集
中する必要などなかろうよ。」

と思われるかもしれませんが、
それは、半分正解で半分不正解。

なぜなら、読解力の高い学習者でも、
文章中に未知語があることがあるから
です。

ですが、ここからが読解力の低い学習者
と違うところ。

読解力の高い学習者は、たとえ未知語を
見ても、

前後の文の関係や自分の持っている知識
を使って未知語の意味を類推し、

「この言葉、だいたいこんな意味なんじゃね。
それでだいたい文の意味通るし。」

ぐらいのファジーな理解で、さっささっさ
と読み進めていくんですね。

そうやって、まずは文章の全体像を俯瞰し
た上で、

分からないところは再度読み込み理解する。

だから、読むスピードも理解も早いのです。

さらに、読解力の高い学習者は、文章の内容を
自身の知識や価値観などと結びつけ、自分事に
落とし込むことによって、

文章のより深い理解、そしてより高次な学びを
獲得しているのです。

これらのことから、

教師は読解活動を文章中の語彙や表現の理解
の確認で終わるのではなく、

文章の内容が自分事として捉えられるような
問い、

さらに突っ込んでいえば、学習者の価値観や
世界観に何らかの変容をもたらす(=ヒビを
入れる)ような問いを、

学習者の脳に打ち込む指導が重要なのです。

まだ現場の指導経験のない方にとっては、
ピンとこない話かもしれませんが、

これこそが、精読指導の秘奥義なんですね。

講義資料では、さらに続けて「テキストから
の学習」について解説しています。

これもなかなか示唆に富む内容。

こちらも平成29年で出題されたもの。

ぜひ、下記通信講座で内容をご確認ください。

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《令和4年新出題範囲、完全対応》

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