バブル期の新卒ブランドを捨て敢て茨の道を進んだ男の話(その4)

なんとか就職した静岡の日本語学校。

当時、日本語教育は「就職氷河期」と言われ、
なかなか就職先が見つからない状況でした。

それに比べれば、今は超売り手市場。

本当に恵まれていると思います。

ただ、経済は必ず浮き沈みがあり、それに連動して
日本語教育も浮き沈みがあります。

だから、目先のことに一喜一憂して、やり始めた
勉強や仕事を、先が見えないからといって1年や
そこらで辞めていては絶対にダメ。

何事も大成しません。

短くても5年、本気でやるなら10年、30年、50年
というスパンで取り組まなければ、

短期的にはいい思いをすることはあっても、
長期的に見れば、ただただしんどい思いを
するばかりです。

逆に、いま苦しい局面であっても、

「今に見ておれ!」

と歯を食いしばって、地道にコツコツ実力を
つけていけば、いつか必ず道は開けます。

なぜなら、世の中で地道にコツコツ続けられる
人は本当に少ないからです。

「セミナーの法則」というのをご存知でしょうか。

セミナー参加者のうち、講師が紹介したノウハウを
実際に現場に戻って実践するのは、全体の1割。
(後の9割は「いい話聞いた!」で終わり。)

さらに、実践した者のうち、成果が出るまで
継続して取り組むのは、そのさらに1割。

結局、100人いたとして、成果が出るまで継続して
取り組むのはたったの1人。

残りの99人は、ほとぼりが冷めたころにまた成果を
求めて新たなセミナーに参加する。
(結局、本人はなーんにも変わらない。)

かくして、セミナー講師は同じ話を何度しても
客が入れ替わり立ち代わりどんどんやって来る
ので、仕事に困らないという法則。

それぐらい、継続するということは本質的に難しい
ことなんですね。

だから価値がある。

話を戻して。

静岡の日本語学校では、本当にいろいろな経験を
させていただきました。

そもそも専任の仕事というのは、授業だけでは
ありません。

私が最初に仰せつかった仕事は、トイレ掃除。
それから、学生の自転車のパンク修理。

はぁ?

と一瞬思いましたが、「まあ、こんなもんか。」
と思ってやりました。

(それでも、2~3回やったら、パンクの修理も
上手くなり、いつの間にか得意げにやってまし
た(笑))

とにかく与えられた仕事を一生懸命やる。
そこに大卒も院卒も関係ありません。

今の自分に与えられた仕事がそれなわけだから
やるしかないわけです。

ですが、そうして一生懸命やっていると、
それを見ていた先輩教師や主任の先生、理事
長から何かとかわいがられるようになり、

日本語の授業はもちろんのこと、日本語教師
養成講座の講師(しかも、講義だけでなく1
年目から実習指導担当)。

入管に提出する新入生の書類作成と提出業務。
(当時、中国人の書類は1人分で紙束10cmほどの量。)

さらには、海外実習の引率(中国、ロシア)。

そして、前回ちょろっとお話しした暴動直後の
インドネシアへの現地入試一人旅。

さらに、キリバス共和国へ派遣した日本語教師
のサポート(2週間)。

地元の支援団体との連絡調整係。

その他もろもろ、専任教師の仕事を一通り経験
させていただきました。

今思えば、これってレイヴとヴェンガーが
唱えた状況的学習論、認知的徒弟制そのもの。

リベリアのヴァイ族とゴラ族の仕立て屋の徒弟制
のように、

養成講座や入管書類など、それぞれの業務には
必ずキーパーソンがいて、

それぞれの人からその業務について学びながら、
順次次のステップに進んでいったわけです。

この辺りまでは、皆さんも養成講座や参考書で
勉強したと思いますが、

認知的徒弟制には、まだ深い部分があって、

何かというと、新参者が最初の入り口での振る
舞いを、各ポジションの全先輩がそれとなく
ちゃんと見ていて、

その新参者の人となりや愛想の良さ、礼儀、言
葉遣い、仕事の能力を値踏みしているというこ
となんですね。(←ここ、すごい大事)

そこでもし、与えられた仕事を拒否したり、嫌
がったりすると、

「おいおい、入ったばかりなのに随分だなぁ。」

となって、先輩の対応がすこぶる閉鎖的になって
しまうのです。

もちろん、教えることも最低限のことだけ。

場合によっては、

「さあ、僕もよくわからないから、自分で考えて。」

で閉店ガラガラ。

学ぶチャンスを相当失っている。

でも、それは実は自分が蒔いた種だったりするわけ
です。

実は、ここに気がつかずに、自分の考えや権利ばか
りを主張して、与えられた仕事を嫌がり、

結果、職場になじめずに辞めていく後輩教師を何人
か見てきました。

トイレ掃除もパンク修理も、その時だけに目をやれば

「なんで、院卒の俺がこんなことをせにゃならんのか。」

となりますが、

「これは、後々のもっと大変な仕事に耐えられるかを
テストしているんだ。」

と思って、手を抜かずしっかりやれば、周りの先輩は

「なかなか根性があるじゃないか。」

となって、次のより大きな仕事を振ってくれるように
なるのです。

おかげで私は、例えば一見無味乾燥な答え合わせに終
始してしまう検定試験解説セミナーにおいても、

それぞれの問題のテーマにそったおもしろい体験談を
織り交ぜながら、笑い、共感、納得に満ちた解説がで
き、何とかご飯が食べていけています。

このおもしろい体験談は、誰にも真似できない、誰に
も盗まれない、代替不可能な篠崎最強の武器。

そう考えれば、人が嫌がる仕事でも進んですることが
遠回りなようで、実は自己実現には一番の近道かつ確
実な道ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。


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