『日本語教育の推進に関する基本的方針』を読む(その1)

本日6月23日、

『日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進
するための基本的な方針』
(以下、『日本語教育の推進に関する基本的方針』)

が閣議決定されました。

日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進
するための基本的な方針の閣議決定について:文化庁
https://bit.ly/3hTmIai

この基本方針は,令和元年に制定された

「日本語教育の推進に関する法律(令和元年法律第 48 号)」

の第10条第1項に基づいて,政府が初めて策定したものです。

今後の日本国内外における日本語教育の方途を大きく左右
する重要な決定ということができます。

それだけに、私たち日本語教育に携わる者は本決定の内容を
十分理解しておく必要があると思われます。

そこで、今回から数回にわたり、

『日本語教育の推進に関する基本的方針』を読む

と題して、本方針を丁寧に読んでいこうと思います。

第1回目の今日は、【概要】です。

日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進
するための基本的な方針【概要】
https://bit.ly/3hNbeVE

まずは全体の輪郭をとらえておきましょう。

本方針は、大きく3つの章から成り立っています。

以下、引用。

============================

○ 日本語教育を推進するため,令和元年6月28日に「日本語
教育の推進に関する法律」(令和元年法律第48号)が公布・
施行。

○ 同法第10条の規定により,日本語教育の推進に関する施策
を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針として、
本方針を策定(令和2年6月23日閣議決定)。

第1章 日本語教育の推進の基本的な方向

1 日本語教育推進の目的
共生社会の実現,諸外国との交流,友好関係の維持・発展
に寄与

2 国及び地方公共団体の責務
○国は日本語教育推進施策を総合的に策定・実施,必要な法
制上・財政上等の措置を講ずる。
○地方公共団体は地域の状況に応じた日本語教育推進施策を
策定・実施する。

3 事業主の責務
国・地方公共団体の日本語教育推進施策に協力,外国人等
とその家族に対する日本語学習機会の提供等の支援に努め
る。

4 関係省庁・関係機関間の連携強化

第2章 日本語教育の推進の内容に関する事項

1 日本語教育の機会の拡充
(1)国内における日本語教育の機会の拡充
幼児・児童・生徒等,留学生,被用者等,難民に対する
日本語教育,地域日本語教育

(日本語指導に必要な教員定数の義務標準法の規定に基づ
いた改善,日本語指導補助者・母語支援員の養成・活用,
就学状況の把握・指針策定等による就学機会の確保,留
学生の国内就職のための日本語教育等,教材開発や研修
等による専門分野の日本語習得支援,地域日本語教育の
体制づくり支援,自習可能な日本語学習教材(ICT教材)
の開発・提供等)

(2)海外における日本語教育の充実
外国人等に対する日本語教育,海外在留邦人・移住者の
子等に対する日本語教育

(日本語教育専門家等の派遣,教材開発・提供,海外の日
本語教育機関への支援,海外在留邦人の子等に対する日
本語教育の実態把握と支援,在外教育施設への教師派遣
等)

2 国民の理解と関心の増進

3 日本語教育の水準の維持向上等
(1)日本語教育を行う機関における日本語教育の水準の維持
向上
日本語教育機関に対する指導・積極的な実地調査,日本
語教師養成研修の届出義務化等

(2)日本語教育に従事する者の能力及び資質の向上等
日本語教師の資質・能力を証明する資格の制度設計,人
材養成カリキュラム開発・実施等

4 教育課程の編成に係る指針の策定等
日本語学習・教授・評価のための枠組みである「日本語教
育の参照枠」の検討・作成,「JF日本語教育スタンダード」
の提供,指導方法やインターネット上含む教材の開発・普

5 日本語能力の評価
「日本語教育の参照枠」に基づいた「日本語能力の判定基
準」の検討・作成等,「日本語能力試験」や「国際交流基
金日本語基礎テスト」の実施

6 日本語教育に関する調査研究及び情報提供

第3章 その他日本語教育の推進に関する重要事項

1 推進体制

2 日本語教育を行う機関に関する制度の整備
日本語教育を行う機関のうち,日本語教育の水準の維持向上
を図る上で必要な適格性を有するものに関する制度の整備を
検討し,検討結果に基づいて必要な措置を講ずる。

3 基本方針の見直し
おおむね5年ごとに検討を加え,必要があると認めるときは
基本方針を変更。

=============================

ざっと見たところ、

「日本語教育の推進に関する法律」

で示された基本方針や、2019年に政府より出された

『外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(改訂)』
http://www.moj.go.jp/content/001311603.pdf

と大きな違いはないようです。

また、すでに動き始めているものもあります。

例えば、第2章「3 日本語教育の水準の維持向上等」
の(1)に示された「日本語教師養成研修」については、
すでに

「日本語教育機関の告示基準第1条第1項第13号に定める教員の
要件にかかる日本語教師養成課程及び研修について」:文化庁
https://bit.ly/31fL5ZE

で、教員養成としての基準を満たした日本語教師養成研修実施
機関・団体と日本語教師養成を実施する大学を公開しています。

ちなみに、大分県は民間の養成機関・大学合わせて日本語教員
養成を行っているのは、我が別府大学だけ。

ということは、大分県下で日本語教員養成ができる指導者は、
なんと私だけ(笑)

また、同(2)については、現在、公認日本語教師制度の設計
を進めている最中。

こちらの資料は、以前にも本メルマガで通読しましたね。
(まだ読んでない方は、必読です。)

『日本語教師の資格の在り方について(報告)』
:文化審議会国語分科会
https://bit.ly/31aqAxQ

さらに、個人的に感じるのは、今回の新型コロナの影響で露わ
になった、グローバルな感染症リスクに対して今後どう対処す
るか、という視点の検討がさらに求められるだろうということ
と、

第2章(1)の中で

「自習可能な日本語学習教材(ICT教材)の開発・提供等」

と書かれていますが、単に動画や教材ネット上にアップし、
学習者の自学自習を前提としたオンデマンド教育だと、
どうしてもドロップアウト率が高まってしまいます。

だいたい10人中9人ドロップアウトしてしまうことが、
これまでの調査報告で明らかになっています。

ですので、オンデマンド教材の開発だけでなく、そうした
教材を使った教師と学習者が同じ時間を共有しながら、

しっかり学習活動を行うオンライン教育の充実が、確実な
成果を生むためには必要な支援体制ではないかと思います。

というわけで、次回より報告書の本文を少しずつ丁寧に
読み込んでいきましょう。

お楽しみに(^_^)


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