自分にハンコを押してくれる人に出会う(その2)

前回の続き。

自分は常識的だと思っているが、はたから見ると完全に
非常識な春日が、

春日にとっては非常識だが、はたから見るといたって常
識的な若林につっ込むという、独特のスタイル。

この今までにない斬新な漫才を引っ提げて、オードリー
は、数々のオーディションを受けた。

しかし、審査員の反応は冷ややかなものだった。

特に、最初に若林が舞台中央に来た後、遅れて春日が
ゆっくりやってくるという演出には、

多くの審査員から、

「もっと早く出てこれないのか!」

と厳しいヤジが飛んだ。

当時のことを、若林はこう振り返る。

「あの頃は、まだ基本的に漫才が下手だったんですね。
アイデアは良かったんですけど。」

オーディションをいくら受けても、結果が出ない日が
続き、

「やっぱりだめか。」

そう諦めかけていた時のことだった。

あるお笑い劇場のオーディションを受けたときのこと。

この劇場は、これまでウッチャンナンチャン、ダチョウ
倶楽部、爆笑問題、くりぃむしちゅーなど、

現在大活躍している多数の芸人も登場した有名な劇場。

しかし、それだけにオーディションの厳しさもまた有名
だった。

審査は、舞台の下にいる審査委員長の目の前で漫才をする
わけだが、審査委員長から

「だいたい分かった。もういい。」

と言われれば、ネタの途中であっても舞台から降りなければ
ならない。

前の組がどんどんネタの途中で降ろされるのを目の当たりに
しながら、舞台袖で待機していた若林も、

「どうせ俺たちも、途中で降ろされるんだろうなぁ。」

と思いながら舞台に立ち、漫才をやった。

ところが、気がついたら途中で降ろされることなく
最後まで漫才をやりきることができた。

漫才の後、審査委員長が、

「君たちの漫才は、M-1グランプリでも優勝できるくらい
のレベルだ。自信を持ってやりなさい。」

とオードリーに声をかけた。

それからというもの、審査委員長は事あるたびに
オードリーに声をかけ、励ましたり、アドバイスを
した。

例えば、春日のツッコミに対して若林が逆ツッコミ
するシーンがある。

春日の顔に若林が強めの張り手を喰らわすのだ。

2人にとってはごく普通のやりとりでも、見る側に
とってはかなり強烈なインパクトがある。

これに対して審査委員長は、

「お客さんから見ると、結構強く殴っているように
見えて怖いから、その直後に2人が仲がいいと
いうところを見せた方がいいよ。」

とアドバイスをした。

そこで2人は、逆ツッコミの後にお互いに目を見合
わせ、相互に照れ笑いをする仕草を入れるようにした。

これにより、観客に対して

「こんなに強く叩いても、仲がいいんだ。」

という印象を与えることに成功したのである。

そしてチャンスがやってきた。

2008年、M-1グランプリ。

初めて出場した大会で、いきなり準優勝を勝ち取った
のである。

それからのオードリーの怒涛の勢いは周知のとおり。

若林はこう述べる。

「たとえ正しいことをやっていても、それを認めて
くれる人がいなかったら、やっぱりだめかなって
思ってしまうじゃないですか。

あの方(審査委員長)は、ボロボロだった当時の
私たちに初めてハンコを押してくれた人なんです。

会うたびにいつも『大丈夫だから自信を持って。』
と励ましてくれました。

あの時の励ましがなかったら、今の私たちはあり
ません。

あの方に足を向けて寝るなんてできませんよ。」

あの方(審査委員長)とは、コント赤信号のリー
ダー、渡辺正行。

そして、若かりしオードリーが受けた劇場とは、
渡辺が運営する渋谷ラ・ママ。

渡辺はこれまで、ここで多くの若手芸人を育ててきた。

渡辺は言う。

「才能のある若手芸人が、目の前でどんどん育って
行くのを見るのが楽しいんですよ。」

そして、今も渡辺は成功を夢見る若手芸人を集めては
コント大会を催しているのである。

ナベヤ部屋
ラ・ママ新人コント大会公式ブログ
https://ameblo.jp/nabe-ya/

◆     ◆     ◆

たとえ正しい道を歩んでいたとしても、それを
確かに正しいと認めてくれる先輩や指導者が
身近にいなければ、

自信を持って続けることは難しいものです。

かつてのオードリーもまさにそうでした。

実際、正しい道を歩みながらも、然るべき指導者
に出会えなかったばかりに、花開く前に消えて
いった人は星の数ほどいます。

では、オードリーはどうして渡辺に出会うことが
できたのか。

それは、とにかく手当たり次第にオーディション
を受け、自分たちの価値を認めてもらえる人を
探していたからにほかなりません。

じっとしていても、向こうから理想の指導者が
やってくるなどということはないのです。

だから、花開きたいと思うのであれば、自分の
「花」に磨きを変えると同時に、

それを認めてもらえそうな人に片っ端から
アプローチをかけるということが大切なのです。

昔と違って、今はメールやSNSで簡単につながる
ことができます。

目指す相手にメールを送ったり、SNSにコメントを
残すなりすれば、意外と簡単に返事が来ること
もあるのです。

もちろんスルーされることもあるでしょうが、
それでもめげずに行動し続ける人にだけ、
成功の女神は微笑むのです。


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