『日本語教育の参照枠』を読む。(その9)

前回に引き続き

『日本語教育の参照枠報告』
 https://qr.paps.jp/ShqFB

今回は、その9回目。

今日は、

「II 「日本語教育の参照枠」について」

「7 能力 Can do 一覧 」

のうち、

「(3)言語運用能力」を扱います。

最近、日本語学校の先生方とこの参照枠
についてお話することが多いのですが、

参照枠の中身はともかく、その運用に
ついては、正直懐疑的な意見が多いです。

私自身も先々の運用については、
分らない部分があり、

というのも、『参照枠』はあくまでも
「参照」(=参考)であって「認定」
ではないので、

現場の先生方や日本語学校が苦労して
対応する割には、

周辺の関係者(留学生の進学先や就職先)
へのインパクトはかなり限定的で、

基本的には従来のように日能試が日本語
力のスタンダードになり続けるのでは
ないかと考えています。

在留資格取得に関わる日本語要件も
今のところ日能試ですし。

文化庁や文科省は、ここまでメスを入れる
ことを考えているのでしょうか。

以下。

===================

(3)言語運用能力

1 ディスコース(談話構成)能力

CEFRでは、ディスコース(談話構成)
能力を、

「言語使用者/学習者が、一連の一貫した
 発話を創造できるように文を配列する能
 力である。」

として、以下の四つの尺度を示している。

・場面に応じた柔軟性
・発話の順番(発言権)
・話題の展開
・一貫性と結束性

柔軟性

C2
強調したり、その場の状況や聞き手などに
応じて変化を付けたり、曖昧さをなくすた
めに、

様々な言語形式を使って、発言を言い直す
幅広い柔軟性がある。

C1 B2.2 と同じ。

B2
B2.2 その場の状況や、聞き手に応じて、内
容、話し方を調節することができ、

その場の状況にふさわしい丁寧さの言葉遣い
ができる。

B2.1 会話で通常見られる流れ、話し方、強
調の変化に適応することができる。

B2.1 自分が述べたいことを表現する仕方に
変化を付けることができる。

B1
B1.2 難しい場面においてさえも、型通りの
表現を余り多用せず、表現を順応させること
ができる。

B1.1 簡単な言語を幅広く柔軟に使って、述
べたいことを多く表現できる。

A2
A2.2 限られた範囲でだが、語彙的な差し替え
を行って、

十分練習した、覚えている言い回しを使って
特定の状況に合わせることができる。

A2.1 既に学習済みの言い回しの組合せを変え
て、使える表現を増やすことができる。

A1 利用できる言語能力記述文はない。

話題の展開

C2 C1 と同じ。

C1
洗練された描写や語りができる。

そして、下位テーマをまとめ、要点の一つを
展開して、適切な結論で終わらせることがで
きる。

B2
論拠となる詳細関連事項や具体例などによっ
て自分の主要な論点を補強して、明快な描写
や語りをすることができる。

B1 事柄を直線的に並べていって、比較的流
ちょうに、簡単な語りや記述ができる。

A2 ポイントを簡単に並べ上げる形で、物事を
語ったり事物を記述できる。

A1 利用できる言語能力記述文はない。

一貫性と結束性

C2
様々な構成パターンや、幅広い結束手段を十
分かつ適切に利用して、一貫性があり、結束
性のあるテクストを作り出すことができる。

C1
様々な構成パターン、接続表現、結束手段が
使え、上手に構成された、明快で流ちょうな
話をすることができる。

B2
B2.2 複数の考えの間の関係を明確にするため
に、様々な結合語を効果的に使うことができ
る。

B2.1 限定的な範囲ではあるが、様々な結束手
段を使って、自分の発話を、明快な、結束性の
あるディスコースへ作り上げることができるが、

長く話すとなると若干の「ぎこちなさ」がある
かもしれない。

B1
短めの、単純で、バラバラな成分をいろいろ結
び合わせて、直線的に並べて、つながりを付け
ることができる。

A2
A2.2 最も頻繁に出現する接続表現を使って、
単純な文をつなげ、物事を語ったり、描写する
ことができる。

A2.1「そして」、「でも」、「〜から」のよう
な簡単な接続表現を用いて語句の間につながり
を付けることができる。

A1
「そして」や「それで」のような、非常に基本
的な並列の接続表現を用いて単語や語句をつな
げることができる。

2 機能的能力

CEFRでは、機能的能力を、

「ディスコースやテクストがコミュニケーショ
 ン中で果たす特定の機能・目的とその使用法
 とに関するものである。」

としている。

そして、学習者/使用者の機能的な成功を決定
する二つの一般的な質的要因についての尺度を
示している。

・流ちょうさ:はっきりと発音し、会話を続け、
 行き詰まった時に対処できる力
・叙述の正確さ:意図した意味を明らかにする
 ために考えや事柄を言語化できる力

話し言葉の流ちょうさ

C2
自分の言いたいことを、長い発話でも、自然で、
苦労なく、詰まらずに、流れるように、表現す
ることができる。

滞るのは、考えを表現するために最適な言葉を
考えたり、適切な例や説明を探そうとしたりす
る時だけである。

C1
自分自身の述べたいことを流ちょうかつ無理な
く自然に、ほとんど苦労せずに述べることが可
能である。

ただ、概念的に難しい内容に関してのみ、自然
で滑らかな言葉の流れが損なわれる。

B2
B2.2:無理なく自然に、コミュニケーションを
行うことができ、

長く、複雑な一連の発話であっても、非常に流
ちょうで、表現に余裕があることが見られる。

B2.1:比較的一定の速さを保って発話を行うこ
とができる。

言い方の型や表現を探す際に詰まることがあっ
ても、目立って長い間が空くことは少ない。

B2.1:互いに無理することなく、ある程度の流
ちょうさで、無理なく自然に、熟達した日本語
話者と普通にやり取りができる。

B1
B1.2:自分の表現したいことを、比較的容易に
表現できる。

言語化する際に、間が空いたり、「袋小路」に
入り込んだりはするものの、他人の助けを借り
ずに発話を続けることができる。

B1.1:ある程度の長さの、理解可能な発話を行
うことができるが、制限を受けない自由な発話
で比較的長いものになると特に、

談話を続けていくときに文法的及び語彙的に正
確であろうとして間が空いたり、発話の修復を
行うのが目立つ。

A2
A2.2:話し始めて言い直したり、途中で言い換
えたりすることが目立つが、

短い発話であれば自分の述べたいことを理解し
てもらえる。

A2.1:言葉に詰まったり、話し始めて言い直す
ことが目立って多いが、

なじみのある話題であれば、あまり困難なく言
いたいことを言葉に表現でき、短いやり取りを
行うことができる。

A1
適切な表現を探したり、余りなじみのない言葉
を言おうとするとき、

また話の流れの修復のために、間が多く空くが、

非常に短い、単独の、多くはあらかじめ準備し
ておいた発話を行うことができる。

叙述の正確さ

C2
例えば、程度の副詞や、限定を表す節などの修
飾語句を、幅広く、比較的正しく使うことに
よって、

意味の微妙なあやを正確に伝えることができる。

自分が主張したい主な点を、聞き手が理解でき
るような形で表現することができる。

強調したり、区別したり、曖昧さを排したりす
ることができる。

C1
内容の確実性/不確実性、信頼性/疑問性、可能
性などに対応した修飾語句を付けて、意見や叙
述を正確に述べることができる。

B2 信頼を得られる程度に情報を詳しく伝えるこ
とができる。

B1
B1.2:概念や問題の主要な点を、比較的正確に
表現することができる。

B1.1:直接関わりのあることについては、簡単
かつ分かりやすい形で情報を伝えることができ、

自分が最も大切だと思う点を、聞き手に理解さ
せることができる。

B1.1:自分が主張したい主な点を、聞き手が理
解できるような形で表現することができる。

A2
なじみのある事柄や型にはまった事柄であれば、
限られた情報を、

簡単かつ分かりやすい形で交換して、自分が述
べたいことを伝えることができるが、

その他の場面では大抵内容的に妥協しなければ
ならない。

A1 利用できる言語能力記述文はない。

=======================

いかがでしょうか。

流ちょうさ、正確さ、結束性、一貫性と
日本語教師にとっては馴染みのある用語
が多かったので、

理解しやすかったのではないかと思います。

ともあれ、『参照枠』はまだまだ続きます。

しっかり読み込んでいきましょう。


日本語教師をめざす方、現職日本語教師の方のための無料メルマガ
無料メルマガ「篠研の“日々成長する教師”」

授業の小ネタや授業実践のコツ、教師としての考え方、息の長い日本語教師になるための知恵などを週2日(火・木)でお届けします。

さらに、今ご登録なさると特典が無料でダウンロードできます。
特典 「精読指導の秘奥義」(全24ページ)

解除はもちろんのこと、メールアドレス変更など個人データの編集も簡単ですので、ご安心ください。プライバシーポリシーをご確認の上、ご登録を希望されるメールアドレスを入力し、ご希望の項目ボタンを押してください。

  メールアドレス【必須】
  お名前(姓)【必須】
  お名前(名)【必須】
  よみがな【必須】
  都道府県【必須】 なお、海外在住の方は「海外」をお選びいただき、下記項目に例のようにご記入ください。
  海外にお住まいの方は「ベトナム(ホーチミン)」のようにお書きください。