『日本語教育の推進に関する基本的方針』を読む(その8)

『日本語教育の推進に関する基本的方針』を読む

の第8回目です。

報告書はこちら。

日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進
するための基本的な方針の閣議決定について:文化庁
https://bit.ly/3hTmIai

今回は、

「第2章 日本語教育の推進の内容に関する事項」

の6回目。

「1 日本語教育の機会の拡充
(2)海外における日本語教育の充実
ア 海外における外国人等に対する日本語教育」

についてみていきます。

先日、国際交流基金(略称、JF)より2018年度の海外
日本語教育機関調査が発表されました。

2018年度 海外日本語教育機関調査
https://bit.ly/31EIF7s

これによると、日本以外の世界中の日本語学習者数は
3,851,774人。

前回比5.4%増、約20万人の増加となりました。

これだけ多くの学習者が世界中にいるわけですから、
ちゃんとした国策のもとで、日本語教育の支援をして
いく必要がありますね。

基本的には、海外の日本語教育は国際交流基金が実務の
中心を担っています。

さて、今後はどのような施策を打っていくのでしょうか。

では早速。

以下、引用。

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(2)海外における日本語教育の充実

ア 海外における外国人等に対する日本語教育

海外において外国人等に対して日本語教育を行うことは,我が
国への理解と関心を増進し,

我が国と各国・地域との間の交流の担い手を育成するという,
外交上の観点からも重要である。

また,外国人等の日本企業への就職や我が国の大学等への留学,
我が国における生活等の円滑化にも寄与するものである。

主要国がそれぞれ自国言語の国際的な普及に努めている中で,我
が国が海外における日本語教育の推進における取組を怠れば,外
交面,経済面その他の不利益を被るおそれがある。

日本文化への関心,我が国における就労や留学等,海外における
日本語の学習目的が多様化する中で,

各国・地域の状況に応じて日本語教育が持続的かつ適切に行われ,
より多くの者に日本語教育の機会が提供できるよう,関係省庁が
適切に連携し,

また,国内外の関係機関や団体との連携・協力に努めつつ,現地
の日本語教育体制及び教育基盤の整備のために必要な施策を講ず
る。

【具体的施策例】

・JFを通じ,各国・地域に日本語教育の専門家を派遣し,現地
の行政機関や日本語教師育成機関,日本語教育を行う機関等と
連携し,

海外において日本語教育を行う上で重要な役割を担う現地の日
本語教師の養成やその日本語教授能力の向上,

日本語教師の養成を担える人材の養成を目的とする研修及び助
言等を行うとともに,

現地の日本語教師が我が国において実施される研修に参加する
機会を提供する。

・JFを通じ,各国・地域の初等・中等・高等教育機関や日本語
教育を行う機関で学習する者,就学や就労等を目的として日本
に居住予定の者,

居住地の近隣に日本語教育を行う機関が存在しない者等,学習
者ごとの形態に合わせて利用できる教材(インターネット上の
教材を含む。)を開発・提供すると同時に,

学習者のニーズに応じた多様な教材を提供するという観点から,
日本語教育を行う機関等が独自に教材を開発しようとする場合
には支援を行う。

・JFを通じ,外国人等が日本語を学習する場を安定的に提供す
る観点及び日本語教育の質の向上を図る観点から,

各国・地域の日本語教師会や学会,初等・中等・高等教育機関
や就労のため来日する外国人を対象に日本語教育を行う機関の
活動に対して,

日本語教育を継続するために必要な教師の雇用や教材調達,日
本語教育関連の催しの開催等に必要な経費の一部を助成するほ
か,

JFが派遣する日本語教育の専門家等の媒介により機関間・日
本語教師間のネットワークを強化し,教授法や教材等の情報共
有及び相互協力を促す。

・JFを通じ,外国人等が継続して日本語の学習を続けるための
意欲の維持及び向上が図られるよう,

学習奨励事業として,各国・地域の日本語教育を行う機関が実
施する日本語弁論大会等の催しの開催への協力や

学習者が我が国において実施される研修に参加する機会を提供
するなどの支援を行う。

また,各国・地域における日本語教育の開始や継続実施を促す
ため,これらの学習奨励事業も活用しつつ,

JF及び必要に応じ在外公館を通じ,外国語教育の政策決定者
・教育関係者に対して日本語教育実施について不断の働きかけ
を行う。

・将来にわたって親日派・知日派が育成されるよう,JFを通じ,
職務上日本語の学習を必要とする各国の外交官,公務員,研究
者等が我が国において実施される研修に参加する機会を提供す
る。

・JF等を通じ,経済連携協定に基づき受け入れる看護師・介護
福祉士候補者に訪日前から日本語研修を行うことで,

生活に必要な日本語を身に付けるだけでなく,病院・介護施設
等の受入施設における就労・研修活動に円滑に従事できるよう
専門分野に関する基礎的な日本語学習機会を提供する。

・外国人等が日本語を学習する大きな動機の一つに我が国の文化
に対する関心が挙げられることから,

現時点で日本語教育が行われていない国・地域も含め,海外に
おける日本語学習への関心の喚起を目的として,

JFを通じ,我が国の文化の魅力を伝える文化発信・文化交流
のための取組を併せて推進する。

・我が国への留学を希望する者が我が国の大学等で教育を受ける
ために必要な水準の日本語を習得することができるよう,

大学等の海外拠点や在外の関係機関と連携し,現地の日本語教
育体制及び基盤整備の支援を行う。

・海外における日本語教育については,民間企業や日本語教育を
行う機関など民間の団体が果たす役割も大きいため,

官民を挙げて海外における日本語教育を一層推進する観点から,
民間団体との連携に向けた検討を進める。

・開発途上国からの要請に基づき,JICAを通じ,同国の経済
・社会の発展,復興への寄与を目的として,

現地各機関のニーズに応じた日本語教育に協力するJICA海
外協力隊を引き続き派遣する。

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学習者の物理的、経済的負担という点から考えれば、
日本語学習は極力学習者の母国で実施したほうが望ましい
ように私は思います。

そして、ある程度日本語力をつけた上で来日し、日本では
日本にいなければできない活動、

例えば、異文化体験や実地研修、あるいは、日本の大学へ
の進学や日本企業の就職などに専念したほうが、

学習者側にとっても、受け入れる私たち日本社会にとっても
win-winではないかと思います。

となれば、海外での日本語学習環境を充実させるということ
がとても重要。

もちろん、今ではウェブ上のさまざまなコンテンツを活用
することで、日本を知ることも日本語を学習することも、
かなりの程度まではできるでしょう。

ですが、実際に母国で日本人教師から直接日本語を学ぶという
経験ほど、彼らのモティベーションをあげるものはないと
私は思います。

そう考えると、今後は国の後押しのもと、日本語教師の海外
派遣が積極的に行われるのではないかと思います。

事実、前回もご紹介した「総合的対策」の中にもその施策は
謳われています。

9ページに示された日本人支援要員がそれです。

「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(改訂)」
http://www.moj.go.jp/content/001311603.pdf

第2の人生を海外でというのも、選択肢として掲げておく
のもいいかもしれませんね。

皆さんは、どのように感じられましたでしょうか。


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