教育コストをケチった多文化共生社会政策の末路。

前回まで6回シリーズでお送りしていました

『日本語教師の資格及び日本語教育機関の水準の
維持向上を図るための仕組みの在り方について
(報告概要案)』を読む

について、本メルマガ読者のK.N様よりお便りを
頂戴いたしました。

と同時に、私の中で沸々と沸いてきた考えが
ありましたので、お話しさせていただきたいと
思います。

K.N様、お便りありがとうございました。

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篠崎先生

こんにちは

先日は、セミナーで大変お世話になりました。

今日は、「篠研の”日々成長する教師”」の
「公認日本語教師に関するメルマガ」について、
深く共感し、

感動したことをお伝えしたくて、メールさせて
いただきました。

私は、文化庁の研修なども受けたのですが、
どこでも、いつでも、”お金”に対する
コメントは控えられ、

ずっとモヤモヤした気持ちでいました。

そこへ、篠崎先生の胸のすくようなコメントを
拝読し、本当に感動しました!

金儲けがしたいという、安直な話ではありませ
ん。

「本気で多文化共生社会の実現を謳うので
あれば、思い切った資金投下が絶対に必要
です。」

本当にその通りだと思います。

こうした意見を発信していただけて、本当に
嬉しいです。

多文化共生社会の実現に向け、本気で動き出す
日が来ることを心より祈っています。

ありがとうございました!

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私も、25年日本語教師をやってきて、
さまざまな制度創設等の議論を目の当たり
にしてきましたが、

どの議論においても強く思うのは、

「費用対効果やコスト意識、特に人件費
についての議論がほとんどなされてい
ない。」

ということです。

例えば、今回の議論においても、

「資料3
日本語教師の資格及び日本語教育機関の
水準の維持向上を図るための仕組みの在り
方について(報告概要案)」

の「○はじめに」に以下のような文言が
あります。

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令和2年3月に文化審議会国語分科会にお
いて取りまとめられた

「日本語教師の資格の在り方について(報告)」

では、日本語教師のキャリアパスの一環として、
日本語教師の資格制度を整えることにより、

優れた日本語教師を養成・確保して、我が国の日
本語教育の質を向上させることが提言されました。

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おそらく、これを読んだ多くの日本語教師の
方は、

「日本語教師の国家資格ができれば、
日本語教師の待遇も上がるだろう。」

と期待なさるのではないでしょうか。

ですが、国家資格を作ったからといって、
自動的に日本語教師の待遇が上がるわけ
ではありません。

国家資格取得後のインセンティブまで
含めた制度設計をしなければ待遇はあが
らないのです。

例えば、今回の資格制度においては、

「日本語教師の質と量の確保」

が強く謳われていますが、

「日本語教師の質を確保する」というのは、

指導力(=質)が上がった教師に対して
十分なインセンティブを与える用意があって
初めて言えることであり、

「日本語教師の量を確保する」というのは、

新規の日本語教師を雇用するだけの雇用機会
と、それに紐づいた十分な人件費の用意が
あって初めて言えることなんですね。

インセンティブの用意も人件費の用意もなし
に、ただ、

「日本語教師の質と量を確保する!」

というのは、言い換えれば、

日本語教師の自己研鑽の成果を国と日本語
教育業界がタダで利用するということであり、
(無銭飲食のようなもの。)

多大な自己投資をして日本語教師になった
方々に、結果的に無償労働を強いることを
意味します。

(まるで外国人労働者に賃金を払わない
零細企業の社長のようなもの。)

事実、国内の日本語教師の半分はボラン
ティアです。

これは、言い換えれば、業界として半分の
教師にしか給料が出せていないということ
なんですね。

いずれにしても、

努力をしても報われない。
資格を取っても食べていけない。

そんな環境で、自信や誇りを持て日本語
教育に携わることができるでしょうか。

教育コストをケチった多文化共生社会政
策がどういう道を歩むことになるか。

もはや言わずもがなでしょう。

もし、

「国としても業界としても、そんなに
資金や人件費をねん出することはでき
ない。」

というのであれば、安易に「質と量を確
保」とは言ってはいけないわけで、

むしろ、ICT技術やWEB学習、eラーニング
を積極的に導入して、

教師一人当たりの指導可能な学習者数を
できるだけ増やすことで、

人件費を抑えながら教育効率を上げていく
仕組み作りの可能性について議論をする
べきなのです。

かつて高度経済成長期の日本は、事業を
拡大させようとするならば、まずは働き手
を集めることが重要でした。

だから、地方の若者は「金の卵」ともては
やされて都会に就職したわけです。

でも、今は違います。

たった一人のユーチューバーが、企業価
値数千億円の上場企業より影響力を持つ
時代です。

だから、今の時代、どんな選択肢があるのか
ということから徹底してリサーチをして、
制度設計を考えなければなりません。

目先のお金だけで判断すると、多文化共生
社会は決してうまくいかないのです。


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